失敗、車いす変更で改善のつもりが【vol.034】

部分的にある改善をしたら、全体的には改悪になっていた
なんてことがしばしば起こります。

改善策が全体のバランスを良く変化させたか
逆に悪い方へ変化させたか、確認が欠かせません。

その変化は、臨むべきゴールにふさわしいものか
一見良さそうに見えるがどこかにマイナス面を発生させてないか
常に全体最適化の視点が必要です。

全体最適化で厄介なのは
変化によって今までより損をする・負担が増える組織や人
その人たちの抵抗です。

そうした組織や人たちへ、理解を示してあげないと
協力を取り付けることが難しくなり、
失敗につながりやすくなります。

今回は、車いすの変更をした際に起きた
失敗事例をご紹介します^^

●車いす変更で負担増となった介護タクシーさん
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ケアマネさんから車いす適合の相談が入ります。

寝たきりで全介助の利用者Aさん、会話は出来る方。
通院のためリクライニング車いすをレンタルしています。

病院での待ち時間が長く、
車いすに座っているのが辛いとの訴えです。

少しでも楽な車いすを合わせてもらえないか、
との申し入れでした。

Aさんは別の福祉用具貸与事業所さんと契約中でしたが
車いすのレンタル契約だけ、私の事業所が担当になりました。

そして、

Aさんは、ネッティ3という車いす利用が始まろうとしていました。
(どうしてこの車いすを選定したかの詳細は割愛します。)

ケアマネさんが担当者会議を開催し
車いすの変更理由・目的を参加者全員で確認。

Aさんにフィッティング済みのネッティ3
実物を目の前にしての打ち合わせを実施しました。

車いす変更後、初めての通院日、
私は、介護タクシーさんが迎えに来る時間より少し前に
立ち会い確認のためAさん宅で待っていました。

この立ち会い確認で、次々と問題が起こり、
私は頭を抱えることになります。

起こったトラブルを順にご説明します。

【問題1】スロープが使えない。
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介護タクシーさん持参のスロープが使えなかったのです。
スロープは伸縮式で2本渡しのタイプでした。

車いす駆動輪の間隔にスロープをセットすると
スロープのエッジにキャスターが引っ掛かりうまく乗りません。

仕方なく車いすごとAさんを担いで縁側から降りることに。

続いて乗車の段階で問題発生です。

【問題2】車いすの全高が高過ぎてAさんの頭が天井に当たる。
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ワゴン車でしたが、Aさんの頭が車内の天井に当たり、
首を曲げてようやく乗っている状態でした。

仕方なく背もたれを倒して頭がぶつからないようにすると
今度は、後部ドアのガラスに頭が当たり、ドアが閉められません。

座席の位置を前に移動したり、
車いすのチルティングとリクライニングを調節して
ようやくAさんの頭が当たらないようになりました。

いよいよ車いすを固定しようとした時、また問題が…。

【問題3】車いす固定のための道具が合わない。
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介護タクシーさんで使用していた車いす固定用のフックが
ネッティ3に使えませんでした。

仕方なく、ベルトで縛って固定し、病院へ出発。
今思えば、なんて危険なことしてたんだろうと思います。

病院から帰宅後、最後は
重くて家の中に上げるのが大変、のおまけつきです。
スロープが使えないので。

トラブル続きでしたが、病院で待ってる間は楽だったと
Aさんがおっしゃって下さったおかげで
ネッティ3は利用継続となりました。

Aさんがネッティ3を利用したのは計4回、
2か月間でレンタル終了となりました。
Aさんが亡くなったためです。

この車いす変更のケースは、
Aさんを主体にみれば、確かにAさんのためになりました。

しかし、サービス全体の負荷が介護タクシーさんに偏ってしまい
全体最適化が図れた、とは言えません。

特殊な車いす利用という新しい試みに、
周りの環境が追いつかない状況は、ままあります。

このケースで、
それを理由にして車いす利用を止めなかったのは幸いでした。

介護タクシーさんが
本当によく対応していただいたおかげと思います。

以上、改善のつもりが全体最適化には至らなかった失敗談でした。
ご参考になれば披露した甲斐があります。

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