車いす選定に転がり抵抗を考慮してみる【vol.042】

車いすが楽に漕げる、操作が軽いかどうか、
そのカギを握っている要因には

・重心の位置
・駆動輪の大きさや角度や位置
・フレームの剛性
・転がり抵抗

などがあります。

今回は、車いすを選定する時に考慮すべき
「転がり抵抗」を取り上げます。

●「転がり抵抗」とは…?
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同じように見える車いすでも、
漕いだり、押したりした時に
軽い、または重いと感じる車いすがあります。

「転がり抵抗」は転がりやすさを表現する時に使います。

転がり抵抗は、大きい・小さい、で表します。

転がり抵抗が大きいとは、転がりにくい傾向を指し、
転がり抵抗が小さいとは、よく転がる傾向を指しています。

車いすの場合、転がり抵抗に影響する因子は大きく二つ、
「走行面」と「駆動輪とキャスター」があります。

●走行面が転がり抵抗に与える影響
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病院内や介護施設内の走行面はほとんど問題はなく、
ごく当り前のことなので説明する程でもないと思いますが、
整理しておきます^^

平らで固い走行面は
車いすを軽く押すと惰性で転がるので
転がり抵抗が小さい走行面です。

一方、芝生の上で車いすは転がりにくく
押しても手を離せばすぐに止まります。
芝生は転がり抵抗が大きい走行面です。

車いすを楽に転がすためには
・固く
・平坦な
走行面にすることが重要です。
この逆は車いすを転がすための負担増になります。

●車輪とキャスターが転がり抵抗に与える影響
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駆動輪は漕ぐための円形の輪っか・ハンドリムが付いている車輪。

キャスターは、一般的には足を乗せるプレートのそばにある小さな車です。

駆動輪とキャスターで転がり抵抗に影響する因子は大きく二つ、
・車輪の直径
・タイヤの空気圧
があります。

車軸の摩擦が影響するのではないか?
とのお声も勿論正しいのですが、ここでは除外します。

●車輪の直径が転がり抵抗に与える影響
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車輪の直径が大きいと転がり抵抗は小さくなり、
良く転がるようになります。

1cm段差を車いすが乗り越える時を思い浮かべてください。

車いすで正面から段差に臨むと、
キャスターが段差に引っ掛かって乗り越えられず
ぶつかったまま止まりますね。

車いすをバックにして駆動輪を前にして段差に臨むと
すんなりと段差を越えてしまいます。

この違いは段差の乗り越え角度の違いにあります。

キャスターは直径が小さいので乗り越え角度が大きくなり、
駆動輪は直径が大きいので乗り越え角度がとても小さくなります。

走行面には多少の凹凸があります。つまり、段差があります。

段差を越える度に転がろうとするエネルギーが消費されるので
乗り越え角度が小さい方が転がろうとするエネルギーが長持ちします。

他には慣性の法則です。

ひもの先におもりを付けて、
カウボーイのようにひもをグルグル回した時
ひもを長くした方が勢いよく回り続けますね。

回す手の動きを止めても
回転は直ぐには止まりません。

これがひもの長さが短いと、
例えば10cm位でおもりを回した時だと
手の動きを止めれば回転は直ぐ止まりますよね。

ひもの長さが長くなるほど
つまり、回転で出来る輪の直径が大きくなるほど
いつまでも回転しようとするエネルギーが大きくなります。

以上が、直径が大きいと良く転がる理由。

しかし、良く転がるように
駆動輪とキャスターの直径を大きくすると
それはそれで使いづらい車いすになりますのでご注意ください。

全体最適化の中で転がり抵抗を観るようにしましょう。

●タイヤの空気圧が転がり抵抗に与える影響
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タイヤの空気圧が低いと、転がり抵抗は大きくなり
転がりにくくなります。

タイヤの空気圧は、タイヤと接地面(走行面)との
摩擦の大きさに影響します。

摩擦が大きくなると転がりにくくなり、
摩擦が小さいと良く転がるようになります。

タイヤの空気圧が低いと、柔らかく凹みます。
走行面との接地面積が大きくなるので
走行面とタイヤの摩擦が大きくなり、転がりにくくなります。

タイヤの空気圧が高いと、固く凹みが小さくなります。
タイヤと走行面の接地面積は小さくなり、
走行面とタイヤの摩擦が小さくなり、良く転がるようになります。

キャスターのタイヤは空気タイヤを使用したものがありますが
一般的には樹脂系の素材を使用しています。

駆動輪と比較すれば十分に硬いのですが、
念頭には置いておきましょう。

●車いすの選定に「転がり抵抗」を考慮してみる
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転がり抵抗を考慮すると
車いすの駆動輪は必ずしも空気タイヤである必要はない、
ということです。

特に屋内に限定して使用する車いすは
転がり抵抗を小さくして、
楽に漕げる、軽い力で押せるように配慮していいと思います。

具体的には、駆動輪にはノーパンク仕様を選択します。
クッション性は空気タイヤより劣りますが、
屋内使用なら問題にならないでしょう。

ノーパンクはタイヤの中に樹脂などのクッション材を充填したタイヤで
空気圧のメンテナンスが必要なく、パンクの心配もありません^^

ただ、摩耗はありますのでご注意ください。
交換はメーカーさんに駆動輪ごと送らないとでないとできませんので
ご注意ください。

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