車いすの背もたれが変わってきた【vol.058】

車いすは、「座る機能」を持ったモデルが増えました。

それでも、安価な「標準型車いす」は未だ健在です^^

主流は「多機能型車いす」。

「多機能型車いす」とは、「多くの機能を持つ車いす」
下記に挙げたような機能があります。

1)背もたれシートの張り調節機能
2)ひじ掛けの高さの調節機能
3)ひじ掛けの跳ね上げや脱着機能
4)レッグサポートの脱着やスイングアウト(スイングイン)機能
5)座面の高さ調節機能
6)背もたれパイプの上部を後方に曲げた
7)骨盤安定のためのサポートベルト機能

シーティングが国内で注目され始めたのが
2005年のこと。

当時、既に上記1~5の機能を持った
車いすは普及していました。

ただ、座る機能としては不十分。

その理由は背もたれにあった、と私は思っています。

ところが、ここ5年、
6・7の機能を持った車いすが登場。

背もたれの変化により
かけ心地がアップしてきています。

●背もたれパイプの上部を後方に曲げた
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背もたれに張り調節機能がない頃から
背もたれのパイプに肩甲骨が当たっていました。

それが、背もたれの張りを緩めたことで
体が背もたれに沈み、
よりパイプに肩甲骨が当たるようになりました。

回避策としてパイプを途中で後方に曲げた。

これだけのように見えて実は、
あるべき方向への変化を感じています。

あるべき方向とは、
体のラインに沿った形状に変化している、と言うこと。

背もたれのパイプがまっすぐだと
いくらシートに張り調節機能を持たせても
座り心地は快適になりません。

既存のフレームが限界にきていたんです。

●骨盤安定のためのサポートベルト機能
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座位姿勢において
骨盤の安定⇒姿勢の安定、につながります。

この機能が必要になった理由は、先に言った通り
今の背パイプでは、骨盤の安定は得られないからです。

そのあたりを見てみましょう。

まっすぐなパイプにシートを張った背もたれは
中央がたわんだ平面になります。

この背もたれに寄りかかり、リラックスすると
平面に体が習う現象を招き、猫背姿勢になります。

背もたれのないイスを壁に付けて座り
壁に寄りかかってみてください。
誰でも猫背姿勢になります。
原理はこれと同じです。

平面の背もたれに寄りかかると
背中の凸部が先に当たり、次いで凹部が当たります。

その時には凸部は前に押し出されているので
上体が前屈させられてしまいます。

背中の凸部⇒胸の後ろ
背中の凹部⇒お腹の後ろ
この二つが同時に当たる面であればいいわけです。
背筋が伸びたままで。

車いすの形状から直ぐできる改善策は
シートの張りを調節可能にして
背中の凸部を収める窪みを作ることでした。

しかし、この方法だと
肩甲骨がパイプに当たるようになり
車いすが漕ぎにくい、腕が後ろに動かせない
などの弊害が生じました。

また、どんなに張り調節をしても
仙骨より下は全く背もたれに当たらないので
「支え」の機能を全く果たしていませんでした。

座りやすいオフィスチェアーを真横から見てください。

背もたれはくの字にカーブしていませんか?
体の凹凸に沿っていますよね。
腰から下の面は前傾していませんか?

これにより座面との間に
お尻のでっぱりが収まる空間ができるわけです。

そうすると仙骨に背もたれが当たって
骨盤を立てて支えることが可能になります。

これに対して車いすの背もたれを真横から見ると
背もたれ全体が後ろに倒れています。
しかもパイプが直線なために体の凹凸にあっていません。

背もたれの張りを緩めても、体がパイプに当たり
それ以上体を窪ますことができません。
この状態ではまだ骨盤の位置が少し前すぎます。

仙骨から下が背もたれにまったく当たらなくなり
骨盤は支えを失い、簡単に後傾してしまいます。

骨盤の後傾は脊柱を屈曲させ、円背姿勢を誘発します。

仙骨と骨盤を支えるためには
背もたれパイプとは別のパイプを前方に設ける必要があります。
そこに張り調節ベルト付けました。

前方にパイプを突き出したことで
骨盤をぐるりと囲んで支えられるようになり
骨盤は前後左右の安定度が増しました。

これで脊柱の安定⇒上体の安定を可能にしました。

●背もたれシートの張り調節機能の変化
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張り調節のためのベルトも変化しています。

背もたれに寄りかかったままでも
張り調節が自由にできるようになりました。

そんなこと、と思われるかもしれませんが
これまではできなかったんです。

いちいち座ってる方の上体を起こし
マジックテープを剥がしたりくっ付けたりしないといけなかったんです。

利用者の負担がなくなったのは良いことです。

また、調節の仕方がより複雑化しているので
メーカーさんにはある要望をしてきました。

YouTubeに張り調節方法の動画が公開されていると
ユーザーさんはじめ貸与事業所さんも助かりますね、と。

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