老化は「廃用」と言うより「環境順応」では【vol.099】
重力が体に与える影響を探る、2回目です。
今回は老化現象がどのようにして起こるのか
についてまとめます。
▼宇宙飛行士は宇宙へ行ったその日から
体に変化が起こります。
今一度、おさらいしましょう。
・血圧が大きく変動する
・貧血状態になる
・筋肉が衰える
・骨量が減少する
・腸の働きが低下する
・免疫の働きが低下する
・暑さや寒さを敏感に感じるようになる
・眠りが浅くなる
・身体を安定させることが難しくなる
などでしたね。
宇宙飛行士が宇宙に行ったらどうなるか?
身体にどんな変化が起こるか?
▼地上において、どんな方法で疑似体験が出来るか
当初、
NASAはベッドの長期臥床実験により起こる
身体の変化のデータで検証を進めていました。
実験は、全世界からボランティアを募り
健康な人にベッドに安静に寝てもらいます。
(日本でもこの実験に参加した方がいるようですよ。)
被験者は、トイレに行くことも
シャワーを浴びることもできません。
一日中ベッドで安静にしています。
この状態で数週間を過ごしてもらい
身体に起こる変化を探るものでした。
こうして得られたデータから
宇宙では冒頭にあげたような身体の変化が起こりうる
ことが事前に予測できていたんです。
▼これらの症状は、一見すると
悪いかのように捉えがちですね。
しかし、見方を変えると
宇宙環境に身体が対応しようとしているために
起こっていることなので
当然といえば当然のこと。
重力が無くなって無重力の環境に変わり
働かす必要がなくなった機能が働かないために
先のような変化が起きた。
それにすぐには身体が付いていけない。
人類が無重力空間に何万年も住み続ければ
それなりに適応した身体になっていくんでしょう。
▼そもそも「廃用」よりも「環境順応」では?
「廃用」とは、使わない機能は衰え、
用を成さなくなってく状態のことですが、
本質的には「廃用」ではなく
「環境順応」なのかもしれませんよね。
そのような環境になったため
機能自体が不要となり喪失していく。
無くても良い体になっていく。
しかし、宇宙飛行士はそれでは困るわけで
いずれ地球に戻れば重力にさらされます。
宇宙に行っても機能を喪失しないように
維持しておかないとならない。
ですから、
宇宙ステーションの中で運動をして
機能の衰えを最小限に抑えています。
▼宇宙飛行士の身体の変化は
高齢者の老化現象と似ています。
違う点とすれば
宇宙飛行士の場合はリハビリにより
機能がほぼ完全復活するのに対し
高齢者のそれはリハビリを行っても
なかなか復活しないことです。
ただし、
機能が衰えていく過程においては
共通点が多く見られています。
そこには
身体への重力の影響を避けるようになることが
老化の加速につながるのが見えてきます。
▼重力を避ける生活とは
例えばどんな状況でしょう。
・走るよりも歩く
・歩くよりもただ立っている
・立つよりも座る
・座るよりも横になる
機能を働かせなくても良い環境を好むことで
立位・座位で必要な機能を喪失していく。
それは廃用と言うよりむしろ、
その環境に順応した身体になっていく方が近い。
急にそうなるわけではなく、
人生と言う長い時間をかけて
重力を避け続けた結果だということです。
(病気によるものは別です。)
離床離床と言われるのは
寝るよりも座る、座るよりも立つ
立つよりも歩く方が、
それだけで失いつつある機能を維持し
呼び覚ますことが出来るからですね。
続きは、次回につづく。