2つの背もたれ(デュアルバック)を持つ椅子【vol.126】
シーティングの観点から
身の回りにある「椅子」を
掘り下げて見てみよう!
5回目です。
今回は「2つの背もたれを持つ椅子」です。
─デュアル・バック・チェア─
聞いたことありませんか?
英語で書くと
【DUAL BACK CHAIR】です。
DUALが「2つの」の意味で
BACKは背もたれのことです。
2つの背もたれを持つ椅子を
いくつか写真にまとめましたのでご覧ください。
では、話を進めます。
写真をご覧になって
「何でこんな形してるの?」
そんな疑問が浮かんだのではないでしょうか^^
私も初めて目にした時は「なんで???」でした(笑)
もうかなり前なので忘れましたが、
国際福祉機器展で初めて見つけた
『LC CHAIR』(株式会社クオリ)です。
「ここに座ると自然と背筋が伸びるんですよ。」
「え!そうなんですか?」
スタッフの方にそう言われて座ってみたんです。
「!!!!!(なるほど…、確かに)」
▼背筋が伸びる仕組みはこうです。
背もたれに寄りかかると、
背もたれ下部で骨盤を起こす力が働きます。
これにより脊柱伸展が促されるという訳です。
背もたれをシーソーの構造にして
寄りかかる力と骨盤を立てる力が
同時に作用し合うようになっています。
絵にするとこんな感じ。
背もたれを真横から見ています。
○が軸です。
背もたれ
│
│
寄りかかる力→│
│
│
│
│
○───支柱
│
│
│←骨盤を立てる力
これは、脊柱伸展と骨盤前傾を
同時に促しているんですね。
この作用のおかげで
背もたれに寄りかかっただけで骨盤が立ち
自然と背筋が伸びるんです。
勿論、この逆の作用も起こり得ます。
背もたれの位置が低すぎたり高すぎると
脊柱屈曲と骨盤後傾を促してしまいます。
ですので、
背もたれの高さが重要になります。
しかし、
オフィスチェアのDUAL BACKは
高さ調節機能はなかったと思います。
あれば良いに越したことはないのですが
調節機能ばかり増やすと
見た目が機械のようになるので
デザイン上なくしているのでしょう。
標準的身長を目安に作ってますからね。
仕方がない。
ここで一つ、疑問があります。
これだけの事なら
一つの背もたれでもできますよね。
なぜ、2つに分けたのでしょうか。
理由を3つ上げますね。
▼背骨をフリーにするため。
脊椎の突起・棘突起に背もたれが
当たらないようにするためです。
棘突起に体重がかかると不快ですから
これを逃げるため。
健康な方は背中の筋肉が膨らんでいるので
棘突起が背もたれに当たることはまずありません。
しかし、少しでも当たらないほうが
背中の感触は良くなります。
▼背中の形は常に変化しているから。
椅子に座る人は
いつも正面を向いているわけではありません。
ジッとしているわけでもありません。
絶えず体を動かしているのが普通。
上体を左右に傾けたり捻じることもあります。
背中の形は絶えず変化しています。
DUAL BACKだと
動きに追従して背もたれが動くので
身体をしっかりサポートします。
ちゃんと背もたれに支えられているので
力が抜けるんですね。
これを側弯の人に応用すると
背もたれの高さを左右別々にすると
側弯に沿った背中のサポートができます。
また、側弯を弱めるセッティングもできます。
▼より背中にフィットさせるため。
背中のカーブは人それぞれです。
それぞれの形に添うようにするには
一つより二つに分かれている方が良いですね。
極端な話、
一枚の板より二枚の板で支えたほうが
背中にフィットするでしょ(笑)
DUAL BACKは、
こんなメリットのある背もたれなのに
あんまり見かけませんよね。
私たちが「座る」行為に求めているのは、
背筋を伸ばすことだけではないと言うことです。
これも一つの形。
色々あるから良いんですね。
DUAL BACK CHAIRに座ってみたくなったら
規模の大きな家具屋さんの書斎コーナーにお出かけください。