シーティング「ユーザーに適した座幅の求め方」【vol.175】
シーティングの3要素から
第二章)人と車いすの寸法関係のこと
第2回目です。
第二章では
『ユーザーに合った車いす主要寸法の導き方』
をマスターします。
今回は「ユーザーに適した座幅の求め方」
についてお話しします。
車いすの座幅は
座シート幅と言ったりもしますが
「座幅」に統一してお話しします。
▼ユーザーに適した座幅の算出方法
以下の算出式より座幅を求めます。
【スカートガードが内付けなら】
→座位臀幅+5cm
【スカートガードが外付けなら】
→座位臀幅+2~3cm
どうしてこの式で求めるのか
スカートガードが内付けと外付けで違う
その意味もこれから説明します。
▼車いすの座幅はどこの寸法か?
先ず
座幅がどこの寸法を指しているか
確認しましょう。(下図)
┃┃ ┃┃
┃┃ ┃┃
┏━┓肘掛け 肘掛け┏━┓
┗━┛ ┗━┛
┃┃ ┃┃
┃┃←←←←←←座幅→→→→→┃┃
┃┃ ┃┃
┃┃ ┃┃
┃┃ ┃┃
┃┃ 座面シート ┃┃
┃┃● ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄●┃┃
┃┃\\ //┃┃
┃┃ \\ // ┃┃
(↑車いすを正面から観た絵)
座幅は、肘掛けフレームの
パイプとパイプの間の内寸法を指します。
ここで注意しないといけないのが
スカートガード取付けの違いです。
「外付け」と「内付け」とでは
実質的な座幅が違ってきます。
▼スカートガードとは?
「スカートガード」は
肘掛けの下に付いている側板です。
「サイドガード」とも言われます。
スカートガードの役割は
駆動輪と着衣の接触を防ぐこと。
着衣の汚れ防止・巻き込み防止です。
最近の物はアルミ板から
黒い樹脂板が多くなりました。
スカートガードがフレームパイプの
内側に付けば「内付け」
外側に付けば「外付け」と言います。(下図)
↓内付け(■印がスカートガード)
┃┃ ┃┃
┃┃ ┃┃
┏━┓肘掛け 肘掛け┏━┓
┗━┛ ┗━┛
┃┃■ ■┃┃
┃┃■ ■┃┃
┃┃■ ■┃┃
┃┃■ ■┃┃
┃┃■ ■┃┃
┃┃■ 座面シート ■┃┃
┃┃● ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄●┃┃
┃┃\\ //┃┃
┃┃ \\ // ┃┃
↓外付け(■印がスカートガード)
┃┃ ┃┃
┃┃ ┃┃
┏━┓肘掛け 肘掛け┏━┓
┗━┛ ┗━┛
■┃┃ ┃┃■
■┃┃ ┃┃■
■┃┃ ┃┃■
■┃┃ ┃┃■
■┃┃ ┃┃■
■┃┃ 座面シート ┃┃■
┃┃● ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄●┃┃
┃┃\\ //┃┃
┃┃ \\ // ┃┃
▼外付けと内付けで実質的な座幅が違う?
上のイラストを見てもお分かりのように
外付けの場合、内付けに比べて
フレームパイプの直径×2本分だけ
中の座幅が広くなります。
「中の座幅」とはこういうことです。
座面を真上から見た図で説明します。(下図)
■● ●■
■ ■
■ ■
■ ■
■ ■
■←←←←中の座幅→→→■
■ ■
■ ■
■ ■
■ ■
■●←←←←座幅→→→●■
●印が、フレームパイプ
■印が、外付けされたスカートガード
車いすのフレームパイプは
直径2~2.5cmの物が使用されます。
なので
フレームパイプ間の座幅よりも
スカートガード間の中の座幅の方が
4~5cm(=2~2.5cm×2本分)
広くなります。
お尻が入るのは中の座幅ですから
スカートガード外付けの座幅には要注意です。
座位臀幅に足す余裕分の数字が変わってくるからです。
スカートガード内付け時は
パイプのあるところも中も同じ座幅です。
実際には
スカートガード厚み分狭くなりますが
その厚みは2枚足しても6ミリ程度まで。
座幅から-6ミリしなくても
無視して良いでしょう。
▼ユーザーに適した座幅の算出式
冒頭示した通り
以下の算出式より座幅を求めます。
【スカートガード内付けなら】
→座位臀幅+5cm
【スカートガード外付けなら】
→座位臀幅+2~3cm
座幅は、
ユーザーの座位臀幅に5cmの余裕をとります。
何で「5cm」かの理由は後で説明します。
外付け時の座幅は
中の座幅が4~5cm広がるので
余裕は+2~3cmに抑えます。
何で「+2~3cm」かの理由は後で説明します。
▼スカートガード内付けは「+5cm」にする理由
5cmの数的根拠
理由として3つ上げられます。
理由1)
出来るだけ座面のセンターに座ってもらいたいから。
理由2)
着座する・立つ動作が支障なく出来る
最小限の余裕であること。
理由3)
腕を後方に引く動作の妨げにならないように。
順に説明します。
▼出来るだけ座面のセンターに座ってもらいたいから
余裕を広くとればとるほど
座面の中心からズレて座るようになります。
車いすのほとんどの座面は
スリングシートと呼ばれる布を張ったものですよね。
もし、
座面の中心からズレて座るとどうなりますか?
骨盤が傾きますね。
脊柱が側弯して
骨盤が回旋して
膝頭が段違いになって
脊柱に捻じれが起こります。
もし、
片側に大きく偏って座ったらどうなりますか?
骨盤の傾きが大きくなって
脊柱の側弯が大きくなって
骨盤が回旋が大きくなって
膝頭が段違いが大きくなって
脊柱の捻じれが大きくなります。
このように
スリングシートの端に偏って座ってもらったら
良くないことが起こります。
そうならないように
出来るだけ座面のセンターに座れるようにしたい。
余裕は必要最低限にしたいのです。
▼着座・立つが支障なく出来る最小限の余裕
それでいて
座る・立つが支障がないできないといけない。
厚手の着衣を想定したら
片側2.5cmの余裕は欲しいですね。
両側で×2の5cmです。
妥当な数字ですね。
▼腕を後方に引く動作の妨げにならない
駆動輪を漕ぐ際は
腕を後方に引きますね。
座幅が広すぎる車いすは
背もたれの幅も広くなりますから
腕を後方に引くとフレームに当たります。
なので
フレームを避けて
肩を上げて腕を横に広げて
腕を後方に引くようになります。
タカアシガニみたいな格好で(笑)
この格好は想像以上に筋力と持久力が要ります。
この状態で車いすを漕げと言うのは酷な話です。
無駄のない
スムースな腕の動きを実現するためにも
腕を後方に引く動きを邪魔しない
背もたれ幅にしないといけません。
それには
座幅を
ユーザーにとって必要最小限の幅に抑えることで
可能になります。
以上が+5cmの根拠です。
▼スカートガード外付けは「+2~3cm」にする理由
中の座幅が4~5cm広がっると言っても
お尻が通過するのはあくまで
フレームパイプの間です。
座幅にはいくらかの余裕が必要です。
ただ
内付けと同じ5cmの余裕をとってしまうと
中の座幅が広がるだけです。
中の座幅の広がりは
ここまで説明したように
座る位置のセンターズレにつながります。
出来るだけ最小限の座幅に抑えたいのです。
厚手の着衣でも立ち座りが
スムーズに出来るだけの最低限の余裕。
それが+2~3cmです。
片側は半分の1~1.5cm。
このくらいの余裕は要りますね。
今回は、ここまでです。