シーティング「奥行きが深すぎる時の対処法」【vol.177】

シーティング第二章「人と車いすの寸法関係のこと」
第4回目です。

 

前回「奥行きの求め方」の中で
座面奥行き40cmの車いすは

身長180cmの方用である
とお話ししました。

 

にもかかわらず、現実は

座面奥行き40cmの車いすばかりです。
身長180cmに満たない方も

座面奥行き40cmの車いすに

座らされています。

 

そのために

背もたれによりかかると

脊柱屈曲・骨盤後傾の

好ましくない姿勢で座るようになります。

 

それもこれも

座面奥行きが深すぎるから。

背もたれの位置が遠すぎるからです。
この状態を放置していいはずはありません。
座面奥行き40cmの車いすを

使うしかないとしても

好ましい座位姿勢で座れるような

工夫は出来ます。

 

今回は
身長180cmに満たない方が座って

座面の奥行きが深すぎる時

どのような対処ができるか考えます。

▼方法は2つ
可能な対処法は以下の2つあります。
1)座面の前方をカットして奥行きを浅くする

2)背中と背もたれの間にクッションを挟む
1番は、身体を後ろに移す方法。

2番は、背もたれを前に出す方法です。
それぞれに一長一短があります。
2つの方法のメリット

デメリットを説明します。

▼座面の前方をカットして奥行きを浅くする方法
─メリット──────────
他に必要な道具がない。

(カットするための道具は要ります^^)

 

─デメリット─────────
一旦カットしてしまうと元に戻せなくなる。

フットサポート(足を乗せる板)の位置が遠くなるので

骨盤後傾しやすく脊柱屈曲を招きやすくなります。

 

この方法ではどちらにしろ

特定の方の専用車いすになります。

多くの方が共用する場合は不向きです。

 

既に自分用に車いすを購入している方の

何とか使いこなすための方法です。

▼背中と背もたれの間にクッションを挟む
─メリット──────────
車いすを改造する必要なし。

多くの方が共用できる。

厚みの異なるクッションを3パターン程度用意して

身長により使い分ければ対応可能です。
加えて

背もたれ下部に空間が出来るように

クッションを取り付けると

臀部の引き込みができ

より脊柱伸展の姿勢で座りやすくなります。
クッションの形や素材を工夫して

背中の曲面にフィットさせれば

快適で安定した姿勢を維持できるようになります。
私の個人的意見としては

標準型車いすは

座面よりも背もたれにクッションを装着した方が

姿勢保持の効果が高いと考えています。
─デメリット─────────
身長の低い方ほど

車いすを自走しずらくなります。
その理由は2つ。
A)駆動輪の位置が後ろに遠くなるため。

B)前輪キャスターに掛かる重量が増えることで

転がりにくくなるため。

 

Aは、

身体の位置が前になれば

駆動輪が後ろに遠のきます。

その分、腕を後方に引く動作がしずらく

漕ぎにくくなります。

 

Bについて説明しましょう。
前輪キャスターに掛かる重量が増えると

どうして車いすが転がりにくくなるか

説明します。

 

車いすには4つの車輪がありますよね。

(6輪車は別です^^)

キャスター2つと駆動輪2つの計4つ。
ユーザーと車いすの全重量は

4つの車輪が配分して受けています。

 

直径が大きい駆動輪は

遠心力が大きくなり

いつまでも転がろうとする力が大きく働きます。

走行面の凹凸や段差の影響も受けにくいので

よく転がります。
直径が小さいキャスターは

遠心力も小さく

いつまでも転がろうとする力も小さい。

走行面の影響を受けやすく

すぐに止まってしまいます。

 

ユーザーの座る位置が

車いすの前方になればなるほど

キャスターに乗っかる重量の割合が増えます。
ただでさえキャスターは転がりにくいのに

その上

キャスターに乗っかる重量配分が増えると

更に転がらなくなるんです。
施設や病院のように

床が平らで段差なく固い素材ならば

転がりにくくなったと

感じることはないでしょう。
だから余計に厄介な問題なのです。
屋外やカーペットの上を走行する時は

途端に転がらなりなるので

誰でもその違いに気付くはずです。

 

以上のように

2つの対処方法は完璧ではありません。
現実的には

クッションを挟む方法が良いと思います。

 

ただこれは、あくまでも

今ある車いすを使いこなすための

苦肉の策であることを忘れてはいけません。

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