シーティング「ユーザーに適した背もたれ高の求め方」【vol.178】
シーティング第二章「人と車いすの寸法関係のこと」
第5回目です。
今回のテーマは、背もたれ
「ユーザーに適した背もたれ高の求め方」です。
足首90度、膝関節90度、股関節90度の
90-90-90の座位可能な方、
車いすを自分で操作する
アクティブユーザーの場合の
背もたれ高の求め方について説明します。
リクライニング機能や
チルト機能が必要な方は
この限りではありません。
始めにお断りしておきます。
▼背もたれ高の算出式
以下の式より求めます。
背もたれ高
=(座位腋下高-10cm)+クッション厚み
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
座位腋下高(ざいえきかこう)は、
座高ならぬ、腋(わき)の下までの高さです。
その数値から10cmを引きます。
背もたれ高さの算出式は
(座位腋下高-10cm)がベースとなります。
座面にクッションを敷くと
見かけ上、背もたれが低くなるので
クッション厚み分を加算します。
クッション厚みは、
無加重時の厚みではありません。
人が座った状態で
実際に身体が高くなる分の厚みを指します。
例えば厚みが10cmでも
座った時に高くなるのが4cmだとしたら
加算するのは4cmとします。
クッション素材で異なりますので
使用するクションを先に決定してから
ユーザーに適した背もたれ高を求めます。
▼座位腋下高から-10cmする理由
上肢で駆動輪を操作する時に
背もたれと肩甲骨が当たらないように
逃げるためです。
駆動輪の操作は上肢で行います。
上肢の動きに合わせて
肩甲骨も動きます。
開いたり閉じたり
上がったり下がったりします。
肩甲骨と背もたれが当たると
不快なだけでなく
肩甲骨の動きが制限されることもあります。
それはつまり上肢の動きを制限するので
スムースな駆動輪操作を不可能にします。
そうならないように
肩甲骨と背もたれが干渉しない逃げを確保します。
▼-10cmの数的根拠とは
逃げのマイナスする数値をは
大き過ぎてもいけません。
高さが低くなり過ぎれば
背もたれの機能を失います。
背中を立て掛けて
体幹固定筋が休息できる高さが不可欠です。
リラックスしても
脊柱伸展を可能にするには
第10胸椎~第12胸椎の支えが必要です。
つまり、
肩甲骨に干渉せず
第10胸椎~第12胸椎を支えられる高さ
その目安が
(座位腋下高-10cm)になります。
ところが、
ここで問題があります。
▼背もたれと介助用ハンドルが一体化している
車いすの構造は一般的に
背もたれと介助用ハンドルが一体化しています。
介助用ハンドルの高さが
背もたれ高より高くなっています。
こうなると
背もたれが肩甲骨に干渉しなくても
介助用ハンドルのパイプが
肩甲骨と上肢の動きに干渉します。
介助用ハンドルの必要が無いユーザーは
ハンドルを無くせば問題解決です。
しかし、
介助の必要があるユーザーの場合(高齢者など)
介助用ハンドルが無いと不便です。
で、どうしたらいいでしょう?
今の車いすは、解決策として
どのような方法を採っているでしょうか?
また、
どんな方法が新たに考えられるでしょうか?