シーティング「肩甲骨と上肢に干渉しない背もたれは」【vol.179 】
シーティング第二章「人と車いすの寸法関係のこと」
第6回目です。
今回のテーマは、
前回の問いかけの答えです。
先ず
問いかけの内容をおさらいします。
(→ここから)
背もたれの高さを
(座位腋下高-10cm+クッション厚)
で設定しても
背もたれのフレームパイプが
介助用ハンドルを兼ねているために
駆動輪を操作しようとすると
パイプが当たって
肩甲骨と上肢のスムースな動きを妨げます。
この課題をクリアーするために
車いすはどんな方法で回避しているでしょう。
また、
どんな方法が新たに考えられるでしょうか?
(←ここまで)
以上の内容でした。
では、
現在流通している車いすが
どんな方法で回避しているか確認します。
▼3つの回避方法
私が知る限りですと
次の3つの方法が見られます。
1)背パイプの途中で後方に曲げる
2)背パイプと介助用ハンドルを分離する
3)背もたれを背パイプより前に出す
一つずつ見ていきましょう。
▼背パイプの途中で後方に曲げる
真っ直ぐな背パイプを途中から
10度、後方に曲げる方法が見られます。
この方策の元々の意図は別にあります。
座位姿勢における
脊柱伸展を可能にするための方策です。
凹凸のある背中に合わせて
後方に出た胸椎を吸収するために
背パイプを後方に逃がしています。
このことが結果的に
肩甲骨の動き、上肢の動きに
干渉しにくくなっています。
▼背パイプと介助用ハンドルを分離する
介助用のハンドルを
フレームパイプとは別にした方策です。
背パイプの後ろに段違いにして
介助用ハンドルを設けています。(下図)
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/ /介助用ハンドル
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/
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/
背パイプ
この方策の意図は
介助者の身長に合わせて
ハンドル持ち手の高さを
上下調節出来るようにしたことです。
また、
ハンドルを使用しない時は短くして
背もたれ後ろに収納できたりします。
これと併せて
肩甲骨の動き、上肢の動きに干渉しないよう
背もたれ高を低く抑えた車いすもあれば
背もたれ高が高いままの車いすもあります。
この方策の元々の意図が違うので
仕方ないことでしょう。
▼背もたれを背パイプより前に出す
スリングシート張りの背もたれではなく
背もたれを分離して
フレームパイプの前に取り付ける方策です。
フレームパイプが後方に逃げますので
肩甲骨と上肢がパイプに当たらなくなります。
肩甲骨と上肢の動きを妨げない
背もたれを選択すれば
車いす駆動がスムースに行えます。
背もたれの高さを低くする以外にも
形状を工夫して
高い背もたれでありながら
肩甲骨と上肢の動きを妨げにくい
背もたれもあります。
後ろから見ると
山形に尖がった三角形の背もたれです。(下図)
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脊柱を寄りかける高さを持ち
肩甲骨の逃げを設けています。
このタイプの背もたれは
車いすの折りたたみが出来るように
着脱を可能しています。
標準型と呼ばれる車いすでも
取付け可能なタイプがありますので
座位姿勢を良くしつつ
車いす駆動もスムースにしたいユーザーには
おすすめの方策です。
ただし、
この背もたれを装着すると
座面の奥行きが浅くなります。
他の面に影響が及びますので
ご注意ください。
以上、
現在流通している車いすでは
これら3つの方法が見られます。
▼他にどんな方法が考えられるか?
これら3つの方法とは別に
全く新しい方法として
どのような方法が考えられるでしょう。
誰もが変える低価格で
簡単に出来る方法。
こんなところで考えていくと
このような現状ありきの発想をしていては
いけないと思うのですが、
上記3つの方法の内の2番目
『背パイプと介助用ハンドルを分離する』を流用し
一本のパイプで
背パイプとハンドルを段違いにしたら
手っ取り早そうです。(下図)
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/
/介助用ハンドル
/\/
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/
/
背パイプ
これなら標準型車いすでも
すぐ出来そうですし
低価格で実現しそうですね。