シーティング「前座高を決める」【vol.181】
シーティング第二章「人と車いすの寸法関係のこと」
第8回目です。
今回のテーマは「座面の前座高」です。
車いすの前座高を求める算出式は
2パターンあります。
算出式A=
(座位下腿長+5~10cm-クッション厚+靴底厚)
算出式B=
(座位下腿長-クッション厚+靴底厚)
算出式AとBの違いは
(+5~10cm)してるか、してないかです。
▼(+5~10cm)の意味するところ
算出式AとBに共通の
(座位下腿長-クッション厚+靴底厚)は
履物を履いて
座面にクッションを敷いて
座った時に
足首関節と膝関節が直角の状態で
足底が床に付いている状態です。
ここに(+5~10cm)した状態とは
同じ座位姿勢をとりつつ
足底が床から+5~10cm離れていて
宙に浮いている状態です。
この場合
足底を支えているのは
足を乗せる板・フットサポートになります。
▼2つの算出式の違い
2つの算出式を分けるものは
ユーザーの自立度の違いです。
自立度が低いユーザーは算出式Aで求め、
自立度が高いユーザーは算出式Bで求めます。
自立度が高いユーザーは
自分で出来ることが多いので
出来ることはしていただく
これを優先します。
そのためには
移乗、足漕ぎが自分で出来る
環境にすべきです。
それには
座面の高さがカギです。
乗り移りしやすい高さ
足漕ぎしやすい高さは
座った時に
かかとが床に付く高さです。
これで初めて
移乗も足漕ぎも
自分で出来るようになります。
一方で
自立度が低いユーザーは
これらのことが自力ではできませんので
介助の手が必要になります。
なので
かかとが付く高さまで
座面高を低くする必要は無いのです。
▼走行性のための(+5~10cm)
フットサポートが
段差や傾斜面に引っかかることなく
車いすが走行できるための
(+5~10cm)なんです。
屋内限定利用の車いすなら
隙間5cmでも十分かと思いますが
外で利用する車いすなら
隙間10cmは必要かと思います。
しかしながら
自立度が高いユーザーに限って言えば
座面高が(+5~10cm)することは
出来ることを阻害することになります。
なので座面高は低くする。
ユーザーの自立度の高い低いに関係なく
フットサポートと走行面の隙間は
(+5~10cm)必要です。
前座高を
かかとが床に付く高さにすると
フットサポートに足を乗せた時
膝が高く上がってしまいます。
しかし、
それは仕方がありません。
フットサポートに足を乗せるのは
走行する時だけの筈ですから。
その時間が短時間である前提においては
問題とはなりません。