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第7回介護Webゼミ|OHスケールはシンプルな床ずれ発生予測評価法。

OHスケールはじょくそう(=床ずれ)発生を「予測するものさし」

OHスケールは
じよくそうになりやすい人か、なりにくい人かが解り、対象者に合った看護の計画・ケアの方法に役立ちます。OHスケールは、対象者がどの程度のじょくそう発生危険度(=リスク)を持っているか明確にする「ものさし」です。この「ものさし」をまとめた大浦武彦氏と堀田由浩氏のお二人の頭文字をとってOHスケールと呼ばれています。

OHスケールの誕生は、じょくそう研究の第一人者である大浦武彦氏を班長とする厚生労働省長寿学総合研究班が、平成10年(1998年)から3年間にわたって全国の施設・在宅において、じょくそう発生とケア・治療の実態調査と分析をした結果が元になっています。

実態調査で検出されたじょくそう発生の危険要因を統計学的手法を用いて分析した所、対象者の4つの状態、「自力体位変換の可否」、「病的骨突出の有無」、「浮腫の有無」、「関節拘縮の有無」の程度を確認すれば、「対象者が持つじょくそう発生リスクの程度」、「じょくそうの発生確率」、「じょくそうが発生した時の平均治癒期間」、「使用すべき体圧分散マットレスのグレード」の予測が付けられることが解りました。


OHスケールじょくそう危険要因点数表

OHスケールは、初めに、対象者を4つの項目で評価し、点数化します(これをOHスコアと呼びます)。次に4項目のOHスコアを足して合計を出します。OHスコアの合計は、最高で10点、最小で0点になります。OHスコアは、点数によって4つのランクに分けれれ、それぞれのランクが持つじょくそう発生リスクの程度をエビデンス(=科学的根拠)によって明確にしています。

下表が、「OHスケールじょくそう危険要因点数表」と呼ばれるもので、これを使って対象者のOHスコアを出します。

評価項目判 定OHスコア
1.自力体位変換
できる
0点
どちらでもない
1.5点
できない
3点
2.病的骨突出(仙骨部)
な し
0点
軽度・中等度
1.5点
高 度
3点
3.浮腫(むくみ)
な し
0点
あ り
3点
4.関節拘縮
な し
0点
あ り
1点

合 計

判定の基準

判定に当たっては、下表を基準にします。

●判定の基準●
1.自力体位変換ベッドや車いすの上で、自力で動けない場合は「できない」、動ける場合は「できる」とします。それ以外は「どちらでもない」とします。
評価に際しては、自力体位変換の出来ない原因(麻痺がある、薬剤による意識低下、脊椎損傷など)は考慮しないで判断します。
普段は動けるが、時々動けなくなることがある場合などは「どちらでもない」とします。
もし、「できない」と「どちらでもない」で迷う場合は、「できない」とします。危険度を高めに評価しておくことは、予防の観点からも妥当です。
2.病的骨突出(仙骨部)

判定は仙骨部から左右に8cm離れたところの臀部がどのくらい低いかによって3ランクに分けます。

   ★0cm以下なら「なし」
    仙骨部骨突出なし

   ★0~2cm未満なら「軽度・中等度」
    仙骨部骨突出2cm未満

   ★2cm以上なら「高度」
    仙骨部骨突出2cm以上

簡易的には、お尻の山があって仙骨より高ければ「なし」、お尻の山の高さと仙骨の位置が同じ高さなら「軽度・中等度」、仙骨が山のように飛び出しているようなら「高度」、と判断しても良いと考えています。

3.浮 腫(むくみ)

浮腫は、足の甲や脚の膝から下の脛(すね)または背中に多く見られます。一番解り易い足の甲で判断するのが良いでしょう。
足の甲を親指の腹で優しく5秒間押して、指を離しても指のあと・指痕(しこん)が消えない状態が続けば、「あり」とします。指痕がなければ「なし」とします。

浮腫指痕

4.関節拘縮どこか1か所にでもあれば「あり」とします。、なければ「なし」とします。

OHスコアが示す床ずれ発生の危険度予測

OHスコアがどのようなじょくそう発生リスクを現わしているか、まとめたものが下表です。

OHスコアレベルじょくそう発生確率じょくそう平均治癒期間体圧分散マットレス
0点危険要因なし
特に必要なし
0~3点軽度レベル
約25%以下
40日
汎用タイプ
4~6点中等度レベル
約26~65%
57日
高機能タイプ
場合によって自動体位変換マットレス
7~10点高度レベル
約66%以上
173日

「じょくそう発生確率」は、通常のケアをしていてじょくそうを発生させる確率のことです。
「じょくそう平均治癒期間」は、通常のケアをしていてじょくそうが完治するまでに要する期間のこと。
「体圧分散マットレス」は、予防と治療時に使用すべきマットレスのグレードを指定しています。

リスクの中に体圧分散マットレスが明記されているのは、高度の骨突出のある対象群で、体圧分散マットレスを使用しなかった人のじょくそう発生率が、使用していた人のじょくそう発生率より30.5%も高い結果を得たことで、使用するマットレスがじょくそう発生に大きな影響力を持つことが検証されたことにあります。

例えば、OHスコアが4点の対象者が持つ、じょくそう発生リスクは次のように解釈します。

「OHスコアが4点の方は、じょくそう発生の危険度が中等度のレベルにあり、じょくそうが発生する確率は26~65%、4人に1~3人の割合です。もし仮にじょくそうを発生させた場合、完治するまでに要する治療期間は平均で57日かかると思われます。じょくそう発生予防のために、高機能タイプのマットレス(エアマットレスまたは、特殊なウレタンやジェル等の素材を使用した厚みが10cm以上あるマットレス)を使用することが望ましい。」


OHスケールの長所と短所。

 ★OHスケールの長所
  1. 日本人を対象とした評価基準である。
  2. 対象者をとりまく環境要因やケアの質に左右されずにじょくそう発生リスクが解ること。
  3. シンプルで簡潔。
  4. 危険度に応じた体圧分散マットレスが選べる。
  5. 危険度に応じた看護計画が考えられる。

 ★OHスケールの短所

   栄養と湿潤・スキンケアに関する項目が評価されていないので心配との声がある。

短所にもありますが、じょくそうの発生には様々な要因が影響します。しかし、OHスケールが誕生するまでの分析段階では、栄養状態も湿潤もスキンケアの問題も考慮されており、その中で対象者の個体要因のみで評価が可能であるとしたスケールですから、実際には短所に挙げられたような心配がないはずなのです。

私がOHスケールの凄さを感じるのは
シンプルで簡単、誰にでも用いることができる評価法であることです。この簡単でシンプルが、在宅介護では必要だと思います。


OHスケール誕生の裏側に見える思惑。

厚生労働省は、1998年~2000年の3年間にかけて行った実態調査の結果を受けるように、相次いで『じょくそう対策に関する診療報酬の新設』に乗り出しています。

  1. 2002年、じょくそう対策未実施減算
    じょくそう対策の要件を満たさない場合、(入院患者一人当たり×入院日数×50円)を入院基本料より減算する。

  2. 2004年、じょくそう患者管理加算
    じょくそう対策の要件を満たせば、に入院患者一人当たり1回の入院につき200円を加算する。

  3. 2006年、じょくそうハイリスク患者のケア加算
    じょくそう対策管理責任者の元、チームで総合的なじょくそう対策ができる要件を満たせば、入院患者一人当たり1回の入院につき5,000円を加算する。

2002年の減算は別として、これだけ病院側にインセンティブを与えていることからして、ここまでしでも、じょくそうを発生させない方がメリットがあると言うことです。恐らく実態調査の目的は「医療費の削減実施の名目を作ること」にあったはずです。じょくそう発生によるに入院の長期化、それに伴う生活自立度の低下、廃用による看護・介護の手間の増大、薬剤費の増加・・・、これらは問題視されていました。こうした負のスパイラルを無くして予防に努めた方が医療費削減につながると、この研究から確証・エビデンスが欲しかったのではないでしょうか。そして、その結果が得られた、のだと思います。


ちなみに

1999年に関西地区の病院と在宅介護を対象にじょくそう発生率を調査したデータによると

   総合病院・・・ 7.6%
   一般病院・・・ 9.5%
   在宅介護・・・11.3% (訪問看護ステーションからの集計による)

2006年の全国の訪問看護ステーションに実施した調査によれば、在宅介護のじょくそう発生率は、5.7%でした。

2009年時点で、私が参加したじょくそうセミナーで講演をされていたWOC認定看護師(=創傷・じょくそう、人口肛門等のストーマ、失禁に関する専門的教育を受け、それらに対応する技術を有する看護師のこと、看護協会が認定する資格)の方々によると、じょくそう対策チーム活動を推進している、「じょくそうハイリスク患者のケア加算」を受けている急性期病院のじょくそう発生率は1%以下との報告がありました。

2011年時点でのじょくそう発生率をとったデータが見当たらないので解りませんが、対応できている病院では確実に発生率が低下していると言えます。


その他の「じょくそうリスクアセスメント」にはどんなものがあるか

他にアセスメント(※)のスケールにどんなものが使われているかご紹介だけします。詳細の説明は省略します。

  ・ブレーデンスケール
  ・ブレーデン・Q・スケール
  ・K式スケール(金沢大学式じょくそう発生予測スケール)
  ・厚生労働省危険因子評価

アセスメントとは
事前評価、初期評価のことです。評価とは、ある基準に従って、対象の優劣、価値を定めることです。一般的には環境分野において使われている用語ですが、介護の分野においては、介護サービス利用者(要介護者、要支援者)の身体機能や環境などを事前に把握、評価することで、ケアプランの作成等、今後のケアに必要な見通しをたてるために必要な評価のことを意味します。


以上、介護術の伝導士こと、草野博樹でした。
最後までおつきあいくださり、ありがとうございます。

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