物体の重心を通る垂線がその物体の支持基底面を通る時、物体は安定してバランスを保ちます。バランスを決定づける要因は、重心と支持基底面の関係にあります。バランスにも、「バランスが良い」あるいは「バランスが悪い」と表現されるように違いがあります。この回では、重心と支持基底面の関係がバランスに与える影響を見ていきます。
物体の重心が偏った位置にある時、バランスにどう影響するか検証します。ここでは重心の高さを一定にして考えます。
支持基底面が半径1メートルの円形の物体A、B、Cがあります。
物体の重心を通る垂線が支持基底面を通過する位置は物体Aは中心を通過、物体Bは中心から右に50cmずれた位置を通過、物体Cは中心から右に90cmずれた位置を通過しています。
3つの物体を同じ角度だけ右に傾けていくと、重心を通る垂線が支持基底面を通過する位置が少しずつ右側に移動していきます。やがて支持基底面からはみ出す物体が出ます。最も早くはみ出すのが物体Cです。はみ出した瞬間に物体Cはバランスを失い倒れます。更に傾けていくと、次に倒れるのが物体B、最後が物体Aとなります。
今度は同じ角度だけ左側に傾けて生きます。一番初めに倒れるのは物体A、次に物体B、最後が物体Cとなります。
物体A、B、Cはそれぞれバランスを保ちやすい向き、バランスを失いやすい向きを持ってます。それは即ち、重心の位置の偏りに起因しています。バランスを偏りなく安定させるには、重心を通る垂線が支持基底面の中心を通過する位置にすること、つまり、支持基底面の中心の真上に置くことです。
今度は、重心の高さの違いでバランスがどう違うかを検証します。ここでは水平方向の重心の位置を同じにして支持基底面の中心にある、として考えます。
支持基底面が半径1mの円形の物体A、B、Cがあります。
重心の支持基底面からの高さは、物体Aが5m、物体Bが3m、物体Cが1mです。
3つの物体を同じ角度だけ右に傾けていくと、重心を通る垂線が支持基底面を通過する位置が少しずつ右側に移動していきます。やがて支持基底面からはみ出す物体が出ます。最も早くはみ出すのが物体Aです。はみ出した瞬間に物体Aはバランスを失い倒れます。更に傾けていくと、次に倒れるのが物体B、最後が物体Cとなります。
バランスは、重心の高さが低い方が安定することが解ります。
支持基底面の大きさ、面積の広さがバランスに与える影響を検証します。ここでは、重心の高さが同じ、重心を通る垂線は支持基底面の中心を通過する、として考えます。
支持基底面が円形で、半径1メートルの物体Aと、半径70cmの物体B、半径50cmの物体Cがあります。
3つの物体を同じ角度だけ右に傾けていくと、重心を通る垂線が支持基底面を通過する位置が少しずつ右側に移動していきます。やがて支持基底面からはみ出す物体が出ます。最も早くはみ出すのが物体Cです。はみ出した瞬間に物体Cはバランスを失い倒れます。更に傾けていくと、次に倒れるのが物体B、最後が物体Aとなります。
バランスは、支持基底面の面積が大きい方が安定することが解ります。
支持基底面の面積が同じでも形が違うとバランスにどんな違いがあるか検証します。ここでも、重心の高さが同じ、重心を通る垂線は支持基底面の中央を通過する、として考えます。
二つの物体AとBが立っています。
物体Aの支持基底面の形は、長方形で縦1m×横4m。
物体Bの支持基底面の形は、正方形で縦2m×横2m。
物体A、Bの支持基底面積は同じ4平方メートルです。
2つの物体を同じ角度だけ右横方向に傾けていくと、重心を通る垂線が支持基底面を通過する位置が少しずつ右側に移動していきます。やがて支持基底面からはみ出す物体が出ます。先にはみ出すのが物体Bです。はみ出した瞬間に物体Bはバランスを失い倒れます。
今度は、2つの物体を同じ角度だけ手前縦方向に傾けていくと、先に倒れるのは物体Aです。
物体A、Bはそれぞれバランスを保ちやすい向き、バランスを失いやすい向きを持ってます。それは即ち、支持基底面の形の違いに起因しています。重心を通る垂線が支持基底面を通過する位置から支持基底面の最外郭までの水平距離が近い方向にバランスは崩れやすく、遠い方向にはバランスは安定することが解ります。バランスをより安定させるには、重心の動く方向に支持基底面の形を広げて距離を長くすることです。
物体のバランスは、
とより安定する。
座位から立位への立ち上がりをバランスを崩さず安全に行うための支持基底面の作り方・足の置き方、重心の動かし方を考えてみましょう。
座位から立位への立ち上がりの時、重心は身体の後ろから前に向かって移動します。よって前方に対して支持基底面を広くとります。尚且つ、左右側方への倒れに配慮して支持基底面を横に広げる必要もあります。それでいて、支持基底面ができるだけ大きくなるようにします。
以上を踏まえた足の置き方は、足を肩幅程度に開き、そこから足を前後に開いた形になります。ただ、重心の動きはカーブを描くようにして前方に移動させます。まず頭を引いた足の方に下げて重心を支持基底面の上に乗せてから頭を前に出した足に向かって移動させます。こうすると重心は支持基底面の上に乗りながら移動するのでバランスが安定します。
左右どちらの足を前に出すのが良いかは、手すりの位置や介助者の位置によって違います。手すりが身体の右側にある時は、左足を前に出します。手すりが左側にあるなら、右足を前に出します。手すりが前側にあるなら、自分のしっくり来る方の足を前に出します。重心の移動する向きと支持基底面の形を考えて変える必要があります。
介助者の場合も手すりと同様です。
座位から立位への立ち上がりには、頭を下げて重心を前方に移動させること以外に、足の置き方・支持基底面の作り方、重心の動かし方がポイントになります。
以上、介護術の伝導士こと、草野博樹でした。
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店長の草野です(93秒)
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