「30度側臥位」は大転子部にポケットタイプの床ずれを発生する危険性を抱えており、特に高齢者のような筋肉の痩せた方がこの体位を2時間も取り続けるのは注意が必要です。
ポケットタイプの床ずれとは、袋状の空洞を形成する床ずれです。これがどのようにして成るか説明します。左のイラストを見てください。
皮膚を引っ張る力Fが働いている状態で、骨突出部に圧迫が掛かってAの個所に床ずれができました。
皮膚を引っ張る力Fを解放して見るとAは左に移動しました。
床ずれはAから骨突出部に向かうように斜めに形成していました。
表面的には床ずれはAの個所ですが、内部にポケットのような床ずれを形成している、これがポケットタイプの床ずれです。
ポケットタイプの床ずれは、常に皮膚を引っ張る力が発生する骨突出個所で起こります。
30度側臥位はこれと同じことが大転子部で起こる危険があります。
斜面に身体を持たれると身体が流れて、皮膚のツッパリが生ずるのは、体験上誰もが解ることと思います。
身体を四角い豆腐に例えて説明します。
右のイラストのように豆腐を30度側臥位にすると、豆腐の重量Wは、斜面を垂直に押す力Aと斜面と水平に豆腐を押し返そうとする力Bにより支えられています。
豆腐と接触面との間に全く摩擦抵抗が無ければ、豆腐は斜面を滑り落ちますが、豆腐が斜面に留まっているのは、接触面との間に摩擦抵抗があるからです。
豆腐には滑り下りようとする力Cが働き続けているため、形がひしげて変形します。豆腐内部では赤矢印で示した方向に動こうとする力が働き、内部にひずみを生じます。
これを身体に当てはめます。
身体の中には骨があるのでイラストは左のようになります。身体は接触面上に留まろうとしますが、骨は滑り落ちようとするので内部組織が歪み、皮膚と骨の間で組織を横にずらす力が生じ、皮膚のツッパリ感を生じさせます。
これが冒頭に示した大転子部で「ポケットタイプの床ずれ」発生の危険性があると言った理由です。
大転子部の皮膚のずれ発生を完全になくすことは出来ません。が、低減する方法はあります。
骨が滑り落ちようとする力を垂直に受ける支持面を設けると内部組織の歪みを極力抑えることができます。
イラストにするとこんな感じです。
こうすることで滑る力 はこの支持面で垂直に受け止められるので骨が滑り落ちようとすることを抑えます。これにより身体の背部に生じる皮膚を引っ張る力が少なくなり、床ずれリスクのない安楽な体位が取れます。また、体位の安定にも役立ちます。
30度側臥位のポジショニングの順序としては、先に脇腹から骨盤、大腿部をほぼ垂直に受ける支持面を作ってから、背中の支持面を作るようにすると皮膚の突っ張りの少ない体位が作れます。
しかし、これでも若干、背部にツッパリ感はあります。それは何度も申し上げた通り柔らかい筋肉の中で硬い骨が動いてしまうために引っ張られる筋肉があるせいです。
ポジショニングの快適性は、
にかかっています。
余談になりますが、今回のテーマにピッタリの車いすをご紹介します。
カワムラサイクルさんから発売されている、「ピッタリフィット」シリーズです。
身体のずれを抑える方法には二つのポイントがあります。
この方法により、臀部背面長の変化がなくなり、シートと身体の接触面にズレが生じません。ズレがないので身体が動かず、ずり落ちもなく、座位が安定・安楽となり、床ずれ発生のリスクも回避しています。
皆さん、一度座ってみてくださいね。その快適さにビックリされると思います。
以上、介護術の伝導士こと、草野博樹でした。
最後までおつきあいくださり、ありがとうございます。
今回の内容を「いいな!」と思ってくださった方は
ブログ、ツィツター、フェイスブックなどで
お友達や大切な方に教えていただけると、とっても嬉しいです。
店長の草野です(93秒)
プロフィールはこちら
介助技術、福祉用具の価値・取扱い方法をお伝えするチャンネル。
登録は赤ボタンから↑