バランスチェアはナゼ背筋が伸びやすいか【vol.127】

シーティング的視点で

身の回りにある「椅子」を観る

6回目です。

今回は「バランスチェア」です。

バランスチェアは下の写真です。

バランスチェア

この椅子の特徴は、

「背筋の伸びた姿勢を取りやすい」ことです。

背筋の伸びた姿勢、とは

「脊柱伸展」「骨盤前傾」の状態です。

バランスチェアは

この状態に近い姿勢を「取りやすい」椅子です。

「取りやすい」なので、

必ずそうなるわけではありません。

「悪い姿勢」になることもあります。

悪い姿勢とは脊柱屈曲、骨盤後傾の姿勢。

この姿勢は、背筋を伸ばすために働く筋肉の総称

「脊柱起立筋」が疲労した時に起こる姿勢です。

背筋を伸ばした姿勢を保つには

脊柱起立筋を働かせ続ける必要があります。

脊柱起立筋の持久力が無いとできませんね。

バランスチェアは

脊柱起立筋が姿勢を保持するための

負荷を軽くしてくれるので

背筋の伸びた姿勢を維持しやすいのです。

理由は、

座位時の骨盤後傾が小さく抑えられることにあります。

ポイントは、座面の前傾斜です。

前傾斜がある分、骨盤が後傾しても

後傾の角度は小さくなります。

詳しく説明しましょう。

仮に、平らな座面に座った時、

骨盤後傾が最大で30度発生するとします。

骨盤の中立位、つまり

骨盤が重力に対して

垂直に立っている状態を基準0度として

後ろに倒れるのでこれを-30度とします。

バランスチェアの座面角度が

仮に前傾斜20度あるとします。

前への傾斜なので+20度とします。

+20度の座面上で骨盤が-30度後傾すると

実際には骨盤後傾は-10度しかしていないことになります。

となれば、脊柱に与える影響、

脊柱屈曲に作用する力は少ない。

脊柱伸展の状態は保ちやすくなりますね。

最大10度までしか後傾しないことは

骨盤を垂直に保つバランスが取りやすいことを意味します。

バランスが保ちやすければ

脊柱起立筋の働きは少なくて済みます。

脊柱起立筋の疲労も少なくなりますね。

バランスチェアに座ると

骨盤が垂直に保ちやすくなり

脊柱起立筋の疲労が抑えられルようになります。

「背筋の伸びた姿勢を取りやすい」理由は、これです。

バランスチェアの座位はどちらかと言うと

「立位」に近い「座位」ですよね。

なので背筋が伸びやすいとも言えます。

座面に前傾斜を付けた分

お尻が滑り落ちやすくなっていますが

そこは、膝のつっかえ棒が安定を作っています。

普通の椅子は、座面が後ろに傾斜しています。

これは、

背もたれに寄りかかることが前提にあるから。

背もたれに寄り掛かった時

前滑りが起こりにくくするために

後ろを低くしています。

そもそも座位姿勢では骨盤後傾が起こりやすい。

理由は、

座位の時の重心が脊柱の前方にあること。

脊柱は前に曲る構造をしていることです。

その上、座面の後ろが下がっていれば

骨盤後傾は容易に起こります。

そこを背もたれの工夫で

背筋が伸びる姿勢に仕上げようとしているのが

通常のシーティングの考え方です。

バランスチェアの発想はこれとは逆です。

身体の自然な反応である

「カウンターバランス」を利用した

背筋の伸びた姿勢を作っています。

バランスチェアは背もたれに寄りかからないで座る椅子です。

自力で姿勢を保てる筋力のある人の椅子です。

強く、タフな脊柱起立筋を少しだけ働かせて座る椅子です。

骨盤後傾を小さく抑え、

脊柱起立筋への負荷を少なくして、

背筋が伸びた姿勢を維持しやすくしています。

それを可能にしたのが座面の前傾斜です。

バランスチェアは、

作業効率の良い姿勢、

上肢が自由に使える機能的な姿勢に

特化した椅子です。

椅子にどんな機能を求めるか、です。

・どれだけの時間

・どんな状態で座っていたいか、

これを割り切る必要があります。

どんなに姿勢よくなっても

背もたれに寄りかかって休めないと

実際の所、一時間以上座るのは

しんどいのかも知れませんね。

バランスチェアは大きな家具屋さんでも

展示を見かけなくなりましたね。

もし、見かけたら座ってみてください。

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