シーティング「ホイールベースの長さが車いす走行性に与える影響」【vol.188】

第三章「人車一体の操作性について」

第5回目です。

「車いすの走行性」に影響する要因7つ、
1)質量中心の位置 (vol.186で済み)

2)ホイールベースの長さ

3)キャンバ角の有無

4)トウ角の有無

5)キヤスター角の有無

6)タイヤの直径・素材・弾性・空気圧・接地面積

7)走行面の状態
の中から、
今回取り上げるのは、2番

ホイールベースの長さが車いす走行性に与える影響について

です。
▼ホイールベースとは?
ホイールベース(以下WBと略)は

車いすを真横から見た時の(矢状面から見た時の)

前輪と後輪の走行面との接地点

AB間の距離を指します。(下図)
後輪
前輪

────A────────B───走行面

前輪のキャスターは360度回転しますので

向きはトレーリング・ポジションとします。
トレーリング・ポジションとは

車いすが前進している時の

キャスター軸の真後ろに

キャスター輪がある状態です。(下図)
キャスター軸







●キャスター輪

WBを別の言い方で表すと

キャスターと駆動輪の車軸間水平距離

とも言えます。(下図)
┃←←←水平間距離→→→●駆動輪軸









キャスター軸
▼WBの長さと走行性
WBは車いすの直進性に影響します。
WBが長いほど直進性は良くなり

まっすぐ進みやすくなります。
WBが短いほど直進性は悪くなり

左右にふらついてまっすぐ進みにくくなります。

別の言い方をすると旋回しやすくなります。

車いすを漕いだ時の感覚

重たく感じる、軽く感じるとは

若干ニュアンスが違いますが
直進性の良い方が車いすを漕いだ時、

軽く感じられます。
▼なぜ、WBが長いと直進性が良くなるのか?
車いす走行中

前輪のキャスターは

走行面の影響を受け左右にブレて動きます。
キャスターが左右にブレると

車いすの前が左右に振れます。
この状態は一見すると

車いすが真直ぐに進んでいるように見えて

実は

細かく左右に蛇行しながら進んでいます。
なので

この左右に振れる角度が大きいほど

直進性は悪くなります。

全く同じキャスターが付いた

WBの長い車いすも

WBの短い車いすも

キャスターの左右のブレ幅自体は変わりません。

同じです。
変わってくるのは車いすの前の振れ幅

つまり

進行方向に対して左右に振れる角度が変わってきます。

WBが長いと

進行方向に対して左右に振れる角度が小さくなります。
WBが短いと

進行方向に対して左右に振れる角度が大きくなります。

下図で説明します。

← 進行方向




●━━━━━━━━━━━━━━━━━●Z
┃Y



この図は、車いすを真上から観ています。

片側のキャスターと駆動輪の関係を示しました。
Yはキャスター接地点、Zは駆動輪の接地点です。

つまり直線YZがWBです。
直線RYはキャスターが右側にブレるブレ量。

直線YLはキャスターが左側にブレるブレ量です。
この時
直線RZと直線LZの成す角度が

車いす前方の振れる角度Xになります。

角度Xは、

WBが長いほど小さくなり、

WBが短いほど大きくなりますね。
▼WBが長いことのメリット・デメリット
メリットは、直進性が良くなること。

デメリットは、旋回しにくくなること。
マラソン競技用の車いすは直進性重視なので

WBが長く設計されていますよね。

旋回しにくいとは

回転半径が大きくなり内輪差が大きくなることです。
小回りが利かなくなることを意味します。

狭い所では回れなくなり

曲がる時にも大回りしないと

駆動輪がはみ出たり物にぶつけたりします。
WBが短いことのメリット・デメリットは

この逆です。
メリットは、旋回しやすくなること。

デメリットは、直進性が悪くなること。

テニス、バスケットの競技用車いすは

旋回性重視です。
小回りが利かないと使えませんので

WBは短く設計されていますね。
介護用の車いすも同じです。
リクライニング車いすのWBが少し長いのは

支持基底面を広げて安定感を重視するためです。
▼今回のまとめ
WBの長さは車いすの直進性に影響し
WBが長いとまっすぐ進みやすくなり

WBが短いとまっすぐ進みにくくなります。

(=WBが短いと小回りが利くようになります。)

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