シーティング「人車一体の操作性について(プロローグ)」【vol.184】
今回から
第三章「人車一体の操作性について」
に入ります。
車いすの操作には大きく二つ
腕で漕ぐ上肢駆動と
脚で漕ぐ下肢駆動があります。
先ず、上肢駆動をメインにして
話をすすめていきます。
下肢駆動はこの章の最後にまとめます。
▼第三章のポイント
この章では
車いすの上肢駆動時に
車いすの操作がしやすい、あるいは
操作がしにくいと感じるのは
何が影響しているか見ていきます。
操作しやすい、操作しにくいとは
あまりに漠然としています。
一体何を指しているのでしょうか。
例えば、
駆動輪を漕いだ時に
車いすが軽く感じたり
重く感じたりすることがもしれません。
駆動輪を漕ぐ動作が
やりやすい、やりにくいことかも知れません。
操作性には二つの意味がありますので
話を分けなくてはいけません。
ユーザーが口にする操作性の良し悪しは
「軽い・重い」のことか、それとも
「やりやすい・やりにくい」のことか。
どちらを言っているのか。
ユーザーの要望に応えるには
どこを確認して、どう変えればいいか。
ポイントとなる判断材料を整理していきます。
始めに
軽く感じる、重く感じるについて整理します。
▼車いすが「軽く感じる」「重く感じる」の真意
この表現の真意は、
軽く感じる ⇒ スイスイよく進む
重く感じる ⇒ なかなか進まない
になるでしょうか。
「スイスイよく進む」と「なかなか進まない」
この差はどこにあるでしょうか。
▼進み具合を分ける要因
主な要因を列挙すると
1)質量中心の位置
2)ホイールベースの長さ
3)キャンバ角の有無
4)トウ角の有無
5)キヤスター角の有無
6)タイヤの直径・素材・弾性・空気圧・接地面積
7)走行面の状態
などがあります。
次に
駆動輪を漕ぐ動作が
やりやすい、やりにくいについて整理します。
▼漕ぐ動作が「やりやすい」「やりにくい」の真意
この表現の真意は、
やりやすい ⇒ 無駄なくスムースに動けて力を伝えやすい
やりにくい ⇒ 動きがぎこちなくなり力を伝えにくい
になるでしょう。
「力」とは、駆動輪を回すための力
車いすの「推進力」のことです。
推進力は、
手のグリップや腕の回転運動、そして
頭と上体の前後運動の「協調運動」が生み出します。
この協調運動が無駄なくスムースに行える時
推進力は効率よく最大化でき、
少ない力で車いすは進みます。
反対に
協調運動がぎこちなければ
どんなに力を入れても効率が悪く
車いすは進みにくくなります。
漕ぐ動作が「やりやすい」「やりにくい」とは
協調運動が「やりやすい」「やりにくい」を意味しています。
この差はどこからくるでしょうか。
▼協調運動のしやすさを分ける要因
主な要因を列挙すると
1)座席姿勢
2)肩関節可動域のどの範囲を使うか
3)ハンドリムと肩関節との位置関係
4)駆動輪の大きさ
5)駆動輪の軸位置
6)ハンドリムのサイズ
などがあります。
次回から
一つずつ詳しく見ていきます。