シーティング「質量中心の位置が車いす走行性に与える影響」【vol.185】
第三章「人車一体の操作性について」
第2回目です。
▼前回のおさらいから
第1回目で説明したことは、
車いすユーザーが訴える操作性の良し悪しには
二つの意味が含まれていて、
一つは、
軽い・重いが意味する「車いすの走行性」です。
スイスイ進むか、なかなか進まないか。
もう一つは、
やりやすい・やりにくいが意味する「身体の協調運動」です。
動きがスムースか、ぎこちないか。
「車いすの走行性」と「身体の協調運動」に与える要因は違います。
「車いすの走行性」に影響する主な要因は7つ。
1)質量中心の位置
2)ホイールベースの長さ
3)キャンバ角の有無
4)トウ角の有無
5)キヤスター角の有無
6)タイヤの直径・素材・弾性・空気圧・接地面積
7)走行面の状態
「身体の協調運動」に影響する主な要因は6つ。
1)座席姿勢
2)肩関節可動域のどの範囲を使うか
3)ハンドリムと肩関節との位置関係
4)駆動輪の大きさ
5)駆動輪の軸位置
6)ハンドリムのサイズ
ここまでを第1回目は整理しました。
専門用語を使い何の説明もしませんでしたので
アレルギー反応が出たんじゃないでしょうか^^
第2回目以降は、
影響する主な要因7つと6つを
一つずつ詳しくみて行きます。
前置きが長くなりました。
今回取り上げるのは
「車いすの走行性」に影響する要因7つから
1番「質量中心の位置」です。
▼質量中心とは何か
質量は重さのこと。
重さの中心とは「重心」のこと。
早い話が
質量中心とは重心のことです。
▼キャスター寄りか、駆動輪寄りか
車いすにユーザーが座った状態
人車一体となった時に
重心の位置がどこにあるかで
車いすの走行性は変化します。
結論を言うと、
重心の位置がキャスター寄りになればなるほど
車いすは重く感じられ、なかなか進まなくなります。
重心の位置が駆動輪寄りになればなるほど
車いすは軽く感じられ、スイスイ進むようになります。
どうしてそうなるか?
理由は後々説明するとして
重心とキャスターと駆動輪の位置関係を
真横から見た図をご覧ください。(下図)
(重たく感じる) (軽く感じる)
(進まない) (スイスイ進む)
重心
← ←◆→ →
▼────────────●駆動輪
キャスター
※駆動輪が後ろに着いている
一般的な車いすとして観てください。
キャスターと駆動輪の印の位置は
タイヤと走行面が接している箇所です。
車輪の軸位置とは違いますので要注意。
また、
重心とキャスターと駆動輪の位置関係を
真上から見た図をご覧ください。(下図)
キャスター
▼────────────●駆動輪
重心
← ←◆→ →
▼────────────●駆動輪
キャスター
二つの図を観て気付いたと思います。
重心の位置が駆動輪側に寄ってますね。
車いすの設計においては
重心の位置が駆動輪側に偏るようにしています。
その理由は言わずもがなで
車いすが軽くスイスイ進むように
走行性に配慮してのことです。
一方で、
駆動輪側に重心を偏らせ過ぎるのは
後方転倒の危険を伴います。
特に坂道を上る時は
後方転倒リスクが高まります。
車いすの走行性と安定性は
逆行するところがあります。
両方のバランスを観て決定します。
重心の位置は
駆動輪寄りに設計されますが
少しでもキャスター寄りなら安定性重視、
より駆動輪寄りなら走行性重視に
設計されていると言えます。
ちなみに
車いすの重心の位置は
簡単に調べることができます。
その方法は、次回ご紹介します^^