シーティング「簡単に車いすの重心を見つける方法」【vol.186】

第三章「人車一体の操作性について」

第3回目です。
今回取り上げるのは

「車いすの走行性」に影響する要因7つ

1番「質量中心の位置」の番外編として
簡単に車いすの重心を見つける方法です。
二つの方法をご紹介します。
先ず一つ目の方法。
▼吊り上げて重心を見つける方法
以下の手順で行います。
1)車いすの前方に正対して立ちます。
2)車いす肘掛前方のフレームパイプに

両ひとさし指を引っ掛けて車いすを吊り上げます。

身体が車いすに触れないようにします。

車いすが左右に傾かないよう

指の高さを同じにします。
3)その姿を真横から写真に撮ります。(写真1)

撮影機材を水平にして撮影してください。

出来るだけ遠い位置から

ズームアップして撮影した方がいいです。
4)車いすを床に下ろします。

今度は別の箇所をひとさし指で吊り上げます。
5)車いすの後方に立ちます。
6)車いす肘掛後方のフレームパイプに

両ひとさし指を引っ掛けて車いすを吊り上げます。

吊り上げ方の肝は2)と同じです。
7)その姿を真横から写真に撮ります。(写真2)

撮影の肝は3)と同じです。
8)写真1と写真2をプリントアウトします。
9)写真1に

指を引っ掛けた箇所を通る垂線を引きます。
10)写真2に

指を引っ掛けた箇所を通る垂線を引きます。
11)写真1と写真2の車いすをピタリ重ね合わせます。

写真を透かして見た時に垂線が交差します。

垂線が交差する点が重心です。
しかし、

これはまだ真横から見た

X軸(前後の位置)とY軸(高さ)が

分かっただけです。(下図)
Y軸(高さ)



|     ●重心




┗─────────→X軸(前後の位置)

正面から見た時の

Z軸(横の位置)は分かっていません。(下図)
Y軸



●重心→○?○?〇?




┗─────────→Z軸

Z軸の位置を見つけるのは簡単です。
車いすを正面から見た形は

左右対称のシンメトリーです。(ほぼ^^)
重心はセンターにあることが分かります。

二次元で求めた重心の位置を

そのまま車いすのセンターまで水平移動すると

そこが重心の位置になります。

この方法を行う時の注意点です。
・車いすを吊り上げる際

腰を痛めないよう注意してください。
・車いすの重量がある場合は

ロープ等で吊り上げる等してください。
・車いすの写真を後で重ねるので

車いすの大きさが同じになるように

撮影してください。
・車いすの位置は出来るだけ同じ位置で

撮影機材をセットする位置も同じ位置にすると

いいですね。
・撮影機材(デジカメ・スマホ)は三脚等で

固定して撮影しましょう。

では、二つ目の方法をご紹介します。
▼体重計に乗せて重心を見つける方法
同じ体重計を4個用意します。
以下の手順で行います。
1)車いすの車輪の下に体重計をセットして

体重計の上に車いすを乗せます。

4個の車輪に一つずつです。

平坦な床にセットしてください。
2)キャスターの向きは

車いすが真っ直ぐ前進する時の状態にします。
3)4個の体重計の値をそれぞれ測定・記録します。

仮に

右キャスターが、300g・・・A

左キャスターが、300g・・・B

右駆動輪が、450g・・・C

左駆動輪が、450g・・・D

だったとします。

左右シンメトリーな形なので

こんな値になるはずです。
4)A+B+C+D=Eを求めます。

E=300+300+450+450=1,500g

これが車いすの全重量です。
5)車いすの全重量Eの内

両キャスターに乗っている重量の和・Fを求めます。

F=A+B=300+300=600g
6)車いすの全重量Eの内

両駆動輪に乗っている重量の和・Gを求めます。

G=C+D=450+450=900g
7)車いすの全重量Eに対する

FとGの重量配分比率を計算します。

Fの比率=F÷E×100

=600÷1,500×100

=40%

Gの比率=G÷E×100

=900÷1,500×100

=60%

この例だと、全重量1,500g中の

4割が両キャスターに乗っていて

6割が両駆動輪に乗っています。
8)次にキャスター軸と駆動輪軸の

水平距離(ホイルベース)を測定します。

仮に、40cmあったとします。
9)長さ40cmの天秤棒の両端に

重さFと重さGが付いている

と考えてください。(下図)
長さ40cmの天秤棒
600g=F●─────────────●G=900g
重心の位置は、

天秤棒のバランスが取れる位置◆の

垂線上にあります。(下図)
長さ40cmの天秤棒
600g=F●────────◆────●G=900g

10)◆の位置を計算で探します。

FとGの重量比がF:G=4:6ですので

◆からの距離(腕の長さ)は逆の比率になります。
つまり、天秤棒のバランスが取れる位置◆は
Fから(40×60%)=40×0.6=24cmの所にあり

Gから(40×40%)=40×0.4=16cmの所にあります。(下図)
長さ40cmの天秤棒
600g=F●────────◆────●G=900g
24cm 16cm
11)この車いすの重心は、

◆の垂線上のどこかにあります。

車いすを真横から写真に撮り、

プリントアウトして◆の箇所に垂線を引きます。(写真1)
12)車いすを後方に倒して

駆動輪の上でバランスが保てる状態にします。

前にも後ろにも倒れない状態です。

この状態を真横から写真に撮ります。(写真2)
13)写真2をプリントアウトして

駆動輪が床と接する点を通る垂線を引きます。
14)写真1と写真2の車いすをピタリ重ね合わせます。

写真を透かして見た時に垂線が交差します。

垂線が交差する点が重心です。
この点を正面から見た時に

センターまで水平移動すると

車いすの重心の位置になります。
写真撮影時の注意点は

一つ目の方法と同じです。

以上

ここまでは

車いす単体での重心を見つける方法です。
▼人車一体時の重心を見つける方法
車いすに人が座った状態で

重心の位置を見つける方法には

二つ目の方法が使えます。

体重計を使ってX軸(前後の位置)を特定します。
車いすごと後方に傾けてY軸(高さ)を特定します。

車いすを後方に倒す時に注意が要ります。

ユーザーの座位姿勢が大きく変化しないように

することです。
カウンターバランスをとろうとして

頭部を前に出し脊柱を屈曲させる反応が起こり

猫背になりますから、
そうならないように脊柱と頭部の状態を

水平時の座位姿勢と同じに整える必要があります。

具体的には背もたれに軽量の板を挿入して

高さのある簡易背もたれを作り、

そこに背中と頭が寄り掛かれるようにします。
細かいことを言えば

座位姿勢も若干変化し

板の重量分で重心の位置も変わるのですが
近い位置は見つけ出せるので

そこは目をつむります^^

Z軸(横の位置)は、

上体がまっすぐであれば

身体のセンターと見ていいでしょう。
これで重心の位置が特定できます。
簡単に!車いすの重心を見つける方法

と言いつつ
それなりの労力とコツが要ることは

どうぞお許し下さい^^

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