シーティング「ユーザーに適した座面奥行きの求め方」【vol.176】
シーティング第二章
「人と車いすの寸法関係のこと」第3回目です。
第二章では
『ユーザーに合った車いす主要寸法の導き方』
をマスターします。
今回は「奥行きの求め方」
についてお話しします。
▼ユーザーに適した座面奥行きの算出方法
車いすに限らず
ユーザーに適した椅子の座面奥行きは
以下の式で求めます。
奥行き=座底長-5cm
▼-5cmする理由
5cmの数的根拠は分かりません。
すみません。
マイナスする意味は
ふくらはぎが座面先端部に触れないよう
すき間を確保することにあります。
▼すき間を確保する理由
理由はこれです。
ずっこけ座りの助長予防
ふくらはぎが座面先端部に当たると
ずっこけ座りを助長します。
これを防ぐためです。
ふくらはぎが座面先端部に当たっている状態は
不快です。
不快感を回避するために
ほとんどの方の反応は
足を前に出すか、
お尻を前に出す動作をします。
これらの動作は
骨盤後傾を引き起こし
不良座位と言われる姿勢
脊柱前屈の姿勢に直結します。
そうならないように
深く座っても
ふくらはぎに座面先端部が当たらない隙間が不可欠。
常に
奥行き<座底長
を満たす必要があります。
また
適切なすき間が確保されていることで
足を座面下に引く動作がしやすくなります。
足を座面下に引く動作は
臀部の除圧動作の一つであり
足漕ぎの動作でもあります。
それがやりやすいのは良いことですよね。
▼広すぎる隙間はダメ!
ただし、
このすき間を広くとりすぎても良くない。
臀部の体圧分散性が悪くなります。
すき間が広くなれば
座面の面積が小さくなり、
体重を受ける面積も小さくなります。
と言うことは
体圧分散性が悪くなりますよね。
程良いすき間でなくてはなりません。
そんなこんなで5cmの余裕
まあ、妥当な数値ではないでしょうか。
▼奥行き40cmは身長180cm相当
試しに
既成車いすの仕様をカタログ等で確認してください。
座面奥行きは40cmの物が多いですね。
日本工業規格(JIS)では
椅子の規格として
標準身長180cmでは
座面奥行きは40cmとしています。
40cm+5cm=45cm
座底長45cmは身長180cmに相当します。
一致してますね。
それも当たり前^^
座底長を元に座面奥行きを決めてますからね。
つまり
既成の車いすは椅子として
高齢者、特に女性には適さないことになります。
(背筋を伸ばして座れる方ならの話)
参考までにJISが定める
身長別の奥行きを以下に示しますね。
【標準身長】→【座面奥行き】
120cm → 29cm
135cm → 33cm
150cm → 36cm
165cm → 38cm
173cm → 39cm
180cm → 40cm
座面奥行き40cmの車いすは
身長180cmの方用です。
それを
身長180cmに満たない方が
椅子代わりに使うとしたら、
現実的に使わざるを得ない状況ですから
どのように対処すればいいでしょうか。
次回で。