人類進化の代償はガンになることだった【vol.037】

日本人の死亡原因の第一位はガンですね。

三人に一人の方がガンで亡くなっています。

早期発見ならガンは治る、と言われますが
そう楽観できる病でないことは確かです。

先週日曜からスタートしたNHKスペシャル番組・病の起源が
人類進化とガンとの関係をとても分かりやすく紹介していました。

そこで今回、番組を見逃した方のために
要旨をまとめてお伝えしようと思います。
(なにより自分の勉強になります^^)
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●ガンはいつ頃からある病か
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今から1億5千万年前の恐竜の骨の化石から
ガンの痕跡が見つかっているので
その頃からガンはあったことになります。

5億5千万年前、

単細胞生物から多細胞生物へ進化を遂げた時点で
生物はガンになる宿命を抱え込んでいた、と言われます。

細胞分裂を繰り返す中で、
コピーミスされた細胞がまたコピーミスをして
誕生したのがガン細胞でした。

●人はガンになりやすい
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人は動物の中でも特にガンになりやすい身体を持っています。

700万年前、人とチンパンジーは
共通の祖先から進化したと言われています。

チンパンジーの遺伝子と人の遺伝子は99%が同じ。
違いはわずか1%。

ところが、ガンによる死亡率を比較すると
チンパンジーの2%に対し、人は30%(日本人の場合)です。

1%の違いに人がガンになりやすい原因がある。

そう考えた米・カリフォルニア大学バークレー校の
ラスムス・ニールセン博士の研究グループは

ガン細胞が、人の精子が増殖する仕組みと同じ仕組みを取り込んで
増殖していることを突き止めました。

●繁殖戦略の変化が精子の遺伝子を変化させた
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チンパンジーの繁殖期はメスの生殖器を赤く腫らす発情のサインで
オスに交尾のタイミングであることを知らせていました。

チンパンジーは交尾の時期が限られていたので
オスは精子を年中作る必要がありませんでした。

それに対し人は、メスが発情のサインを隠すことで
オスを積極的に子育てに協力させる繁殖戦略へと変化したことで
精子を作る仕組みを変化せざるを得なくなったのです。

700万年前、二足歩行したことが契機と考えられています。

人のメスは子供を抱えながらアフリカの広大なサバンナへ
食料を採りに出かけることが困難でした。

そこでメスはオスに食料を運ばせることにしました。
その方が安全で効率的だったからです。

メスは交尾のタイミングを知らせるサインを隠し
オスに交尾のタイミングが分からないようにしました。
オスは絶えずメスと交尾する以外、子孫を残せなくなりました。

オスはメスの気を引こうとメスの元に食料を運びます。
メスは交尾させる代わりにオスに食料を運ばせ
積極的に子育てに協力させたのです。

こうしてオスの精子は絶えず作られるように進化を遂げます。

この仕組みをガン細胞が取り込み、
絶えず増殖できる能力を獲得します。

●脳の巨大化とFASを使って増殖するガン細胞
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180万年前の人の脳は1000ml、
250万年前は450ml、2倍になっていました。

人の進化と病の研究をしている
ダブリン市立大学、メアリー・オコーネル博士と研究チームは
脳の巨大化にはFASという酵素が関係していることを発見します。

FASは細胞を作る材料の脂肪酸を作る働きがあり
ほぼ全ての生物が持っています。

人のFASは他の動物のFASと比べ
脂肪酸を作る能力がパワーアップしていました。

その結果、脳内細胞が活性化し
細胞同士のネットワークを広げ巨大化したのです。

ガン細胞の増殖メカニズムを研究している
ジョンズ・ホプキンス大学のガブリエル・ロネット博士は

ガン細胞もまたFASが作る脂肪酸を使って細胞分裂し
増殖していることを突き止めます。

ほぼ全てのガン細胞がFASを大量に使って増殖していたのです。

人は進化の度、ガンになる条件を取り込んでいったのです。

●出アフリカで生活圏が変化し、ビタミンD不足を招いた
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6万年前、

人口が増加した人類は、人類誕生の地・アフリカを出て
ヨーロッパ⇒アジア⇒アメリカ大陸と生活圏を広げていきました。
そして日差しの弱い地域でも暮らし始めるようになったのです。

日差しの弱い地域では浴びる紫外線の量が少なくなります。

浴びる紫外線が少なくなると
皮膚で作られるビタミンDの生成量が減少します。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の
セドリック・ガーランド博士の研究チームは
全米各地の紫外線量と大腸がん発生率に相関性があることを突き止めます。

博士は、ビタミンD不足がガン増殖に関わっているのではないか、
と仮設を立て、実験を試みます。

大腸ガン死亡率が全米でも特に高い
ネブラスカ州フリモント市の3千人を対象に

毎日ビタミンDの錠剤を飲み続けたグループと
全く飲まなかったグループのガンの発症率の違いを
4年間に渡って調査しました。

その結果、乳がん・大腸ガン・肺がんの発生率において
ビタミンDを飲んだグループのガン発生率が半分に下がっていたのです。

これにより、紫外線が弱い地域に住むことで引き起こされる
ビタミンD不足がガン発生のリスクを高めていることが分かってきました。

一方、過度の日焼けは皮膚がんの恐れがありますのでご注意ください。
一日15分程度は日光を浴びることが大切です。

●18世紀の産業革命で発ガン性物質が増えた
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タバコ、アスベスト、ダイオキシンなど
ガン細胞を生んでしまう多くの発がん性物質を発生させたことが
更に影響しています。

●ライフスタイルの変化がメラトニンの分泌量を減らした
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人が夜間寝ている間に血中に分泌されるメラトニンは
睡眠や身体のリズムを調整する働きだけでなく
ガンの増殖を抑制していることが分かりました。

交代勤務や24時間営業の病院・消防・警察・企業・お店が増え
ライフスタイルが大きく変化しました。

夜間に光を浴びるとメラトニンが作られなくなります。

ライフスタイルの変化は、本来、夜間に体内で行われていた
ガンの抑制システムを台無しにしたのです。

メラトニン量とガンの関係を示すデータとしては
こんな所が知られています。

いつも夜間勤務をしている看護師の乳ガン発生率は
日中勤務しかしていない看護師の2.9倍。
昼と夜の交代勤務をしている看護師の乳ガン発生率は1.8倍。

夜間勤務の男性の前立腺ガンのリスクは3倍。

現在、日本人の5人に一人が夜間勤務をしています。

700万年前、アフリカで誕生した人類は
昼は太陽のもとで活動し、夜は眠る、スタイルをずっと続け
ガンの増殖を抑える仕組みを働らかせていました。

その後、人類は進化の過程でこの仕組みを崩し続けているのです。

●ガンを死滅させる新しい治療法⇒FAS阻害薬
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ガンはFASなしに増殖することができない。

FASの働きをブロックすればガン細胞は叩ける。

そんなFAS阻害薬が3年前精製に成功しています。

まだ細胞レベルの実験ですが、
投薬後、わずか一日でガン細胞の増殖を抑え
次々と死滅させることが確認されました。

この新薬は、FASだけを標的にするので
他の正常な細胞には何の影響も与えません。

従来の抗がん剤のような副作用が全くない薬なのです。

現在、ガン患者に対し安全性と有効性を確認すべく
臨床試験の準備が進められています。

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