アルブミン値(ALB)は栄養状態を反映していない?【vol.055】
床ずれの話になると必ず栄養管理の話になります。
栄養が足りてる・足りてないの判断基準に
血液中のアルブミン(以下ALBと表記)値が
参考にされることがあります。
ALB値が3.5g/dL以下だと
低栄養状態だと、私も教わりました。
ところが床ずれセミナーの最後に
床ずれ治療における栄養管理をテーマに講演されたK先生は
「ALB値は栄養状態の指標として適さない」とおっしゃいました。
ナゼか、
聴けば納得の理由をシェアしたいと思います。
●アルブミンとは何者か?
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ALBは肝細胞で作られるタンパク質で、血液中にあります。
血液中には約100種類のタンパク質があると言われますが
その50~60%をALBが占めています。
ALBの働きは血液中のさまざまな物質を運んだり
体液の濃度調節をすること。
肝臓で作られることから
肝機能の状態を知る手がかりにもなります。
ALBの基準値は3.9~4.9【g/dL】。
1dLの血液中に3.9~4.9gのALBがあれば正常とされ
3.9g/dLを下回ると低栄養と言われます。
基準値を他の資料で調べると、ばらつきがありましたが、
ここでの値はセミナー資料に記載されている値としています。
●アルブミンは栄養状態の指標として適さない
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床ずれにならない、または治るためには
栄養が十分取れていることが必要です。
K先生は栄養管理は最低条件であり
予防や治癒のための十分条件ではない。
栄養が足りていても床ずれになるし、
治らない場合もある。とおっしゃいます。
このあたりは私も同感です。
そもそも何をもって栄養状態が良い悪いと言えるのか。
これまで、その指標がALB値でした。
ALB値が高ければ栄養状態は良い。
低ければ低栄養と言われました。
しかし、ALB値増減の理由は
栄養状態以外にもあることから
栄養状態の指標としてふさわしくない。
これが現在、主流の考え方のようです。
●CRP値が上がるとALB値は下がる
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栄養状態以外にもALB値が増減する理由に
CRPと言うタンパク質が関与しています。
C反応性タンパク(C-Reactive protein)と言われ
体内で炎症反応や組織の破壊が起きている時
血液中に現れるタンパク質です。
炎症を抑える働きをします。
そのため炎症マーカーともいわれ
CRP値が高い⇒体内に炎症がある、ことを示しています。
炎症の原因は癌だったり、
敗血症、肺炎などの感染症だったりします。
床ずれも炎症の一つですね。
例えば肺炎を患っている方が
床ずれを発生させたとします。
床ずれが治るためには新しい組織を作るタンパク質が要ります。
床ずれ治癒の段階で肉芽があがってくるためには
タンパク質の合成が欠かせません。
ところが、体内に肺炎の炎症があると
炎症の鎮静化が優先されるため
タンパク質の多くがそちらで消費されます。
血液中のタンパク質が足らないと
ALBまでもが異化作用により分解され消費されます。
その結果、血液中のALB値低下が起こります。
異化作用とは物質をバラバラにすることで
ALB分子をバラしてエネルギーとして消費した
と言うことです。
このように炎症マーカーのCRP値が上昇すると
ALB値が下がる現象が起こります。
ALB値が低いと床ずれが治りにくいのはこのためです。
絶対量としてのタンパク質が足らないとこうしたことが起こるので
栄養摂取としてのALB値コントロールが床ずれの治癒に繋がり
そこからALB値が栄養状態を示していると考えられてきました。
しかし、これまでの説明でお分かりのように
十分に栄養の足りている方でも
炎症を起こすと一時的にALB値が減少するので
ALB値が栄養状態を必ずしも示していないことになります。
●アルブミン値は血液中のタンパク質予備力を示している
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ALB値は血液中にあるたんぱく質の量を示しており
どれくらいタンパク質の予備力があるかを図るための指標にはなりえます。
それはつまり、
床ずれや組織を修復するための血液中タンパク質に
どれくらい予備力があるかを知るバロメーターとなります。
ALB値は断片的に見ても意味がなく
連続的にチェックすることで傾向を掴むことに意味があります。
血液中タンパク質は増加傾向にあるのか減少傾向にあるのか
増加傾向にあれば
床ずれ治癒に向かっていることが分かり
減少傾向にあれば
床ずれ悪化に向かっていることが分かります。