シーティング「下肢が座位姿勢に及ぼす影響」【vol.171】
シーティングの3要素
第一章「人の身体のこと」第17回目です。
今回は、
「下肢が座位姿勢に及ぼす影響」
についてです。
これは骨格と筋肉の理解がすすんだ後に
と思っていました。
上肢と頭部も座位姿勢に影響を与えていますが
下肢ほどではありません。
▼もし、下肢が無かったら
病気や事故で下肢を失ってしまったら
座位はとても不安定になります。
2つ折りの携帯電話・ガラケーに
例えてお話しします。
ガラケーを90度に開いて
クッションの上に置いてみてください。
多少ふらつきはあるものの
立っていられますよね。(下図)
┏━┓
┃・┃
┃・┃
┃・┃←キー
┃・┃
┃・┃
┃・┃
┃・┃
┃・┃
┃・┃ ↓液晶画面
┃・●━━━━━━━━━┓
┗━━━━━━━━━━━┛
(↑ガラケーを90度開いて真横から見た図)
でも、
閉じたままクッションの上に立てて置くのは
至難の業ですよね。(下図)
┏━━┓
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┃・┃┃
┃・┃┃
┃・┃┃
┃・┃┃
┃・┃┃
┃・┃┃
┃・┃┃
┃・┃┃
┃・●┃
┗━━┛
(↑ガラケーを閉じて真横から見た図)
つまり
こういうことですよね。(下図)
┏━┓
┃・┃
┃・┃
┃・┃←体幹
┃・┃
┃・┃
┃・┃
┃・┃
┃・┃
┃・┃ ↓太もも
┃・●━━━━━━━━━┓
┗━━━━━━━━━━━┛
(↑ガラケーを身体に見立てた図)
ガラケーを閉じた状態は
両方の下肢が無い場合に相当しますね。
その時、
全体重を支えるのは坐骨です。
支持基底面がかなり小さくなるので
座位がとても不安定になります。
片方の下肢がある場合は
幾分バランスは保てますが
支持基底面が三角になるので
失った下肢側に倒れやすくなります。
下肢があるだけで
座位姿勢の安定にかなりの貢献をしているのです。
幸い、ほとんどの方は
両方の下肢があります。
しかしながら
下肢の状態によっては
好ましい座位姿勢にも
好ましくない座位姿勢にもなります。
好ましい座位姿勢は
脊柱が伸展していて
骨盤が前傾している姿勢。
好ましくない座位姿勢は
脊柱が屈曲していて
骨盤が後傾している姿勢。
下肢は骨盤とつながっています。
下肢の状態によって発生した力が骨盤に伝わり
骨盤を前傾させたり後傾させることが、結果
脊柱の伸展と屈曲の反応を招いています。
▼好ましい座位姿勢を作り出す下肢の状態
好ましい座位姿勢を保つためには
次の2点が大事となります。
・「90─90─90」の座位姿勢をとる
・股関節を中間位に保つ
「90─90─90」の座位姿勢とは
股関節が90度、膝関節が90度
足首が90度に曲っている状態の座位です。(下図)
┃・・・┃
┃・・・┃股関節
┃・・・┃90度
┃・・・┗━━━━━━┓
┃・・・・・・・・・・┃
┃・・・・・・・・・・┃
┗━━━━━━━━┓・┃
・・・・・・膝関節┃・┃
・・・・・・90度┃・┃
・・・・・・・・・┃・┃足首
・・・・・・・・・┃・┃90度
・・・・・・・・・┃・┗━┓
・・・・・・・・・┃・・・┃
・・・・・・・・・┗━━━┛
(↑座位を真横から見た図)
股関節を中間位に保つとは
がに股や内股にならず
膝頭が離れていて
太ももとすねが平行に見える状態にすること。(下図)
┏━━━━━━━┓
┃・・・・・・・┃
┃・・・・・・・┃←骨盤
┃・・・・・・・┃
┃・・・・・・・┃
┃・・┏━┓・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃←ふともも
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┗━━┛・┗━━┛←ひざ頭
(↑座位を真上から見た図)
┃・・・・・・・┃
┃・・・・・・・┃
┃・・・・・・・┃←骨盤
┏━━┓・┏━━┓
┃・・┃・┃・・┃←ひざ頭
┃・・┃━┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃←すね
┃・・┃・┃・・┃
┃・・┃・┃・・┃
┏━━┓・┏━━┓
┃・・┃・┃・・┃←足
┗━━┛・┗━━┛
(↑座位を真正面から見た図)
もう一つ加えるならば
背もたれに寄りかからないで浅く座り
足を座面下に引くこと。
お尻の真下まで引くこと。(下図)
┏━┓・┃・・・┃
┃・┃・┃・・・┃
┃背┃・┃・・・┃
┃も┃・┃・・・┃
┃た┃・┃・・・・┓
┃れ┃・┃・・・・・┓
┃・┃・┃・・・・・・┓
┃・┗━┗━━━━┓・・┓
┃・・・・座面・・┃・・┃
┗━━━━━━━━┛・・┃
・・・・・・・┏・・・・┛
・・・・・・┏・・・┛
・・・・・┏・┏┛
・・・・┏・┏
・・・・┗・┗
・・・・・┗・┗
・・・・・・┗━┛
(↑座位を真横から見た図)
骨盤が前傾する理由は
支持基底面が前後に狭まったために
重心を後方に引き戻そうと
脊柱伸展の反応が起きたからと考えられます。
▼好ましくない座位姿勢を作り出す下肢の状態
次に
好ましくない座位姿勢を作り出す
下肢の状態を確認します。
下肢が骨盤を後傾させてしまうのは
次の様な状態の時です。
1)ひざ頭の位置が骨盤より上にある
2)ひざを伸ばしている
3)がに股
4)内股
5)脚を組んでいる
この続きは、次回で。