シーティング「フットサポートの調節範囲」【vol.182】
シーティング第二章「人と車いすの寸法関係のこと」
第9回目です。
今回のテーマは「フットサポートの調節範囲」です。
フットサポートは
車いす走行中に足を乗せて置く板です。
既製品の車いすを利用する場合、
フットサポートの位置が
ユーザーに適した位置に調節可能かどうか
確認が必要です。
確認は、以下の式で行います。
(座位下腿長-クッション厚+靴底厚)
(-クッション厚)する理由と
(+靴底厚)する理由を説明します。
▼座位下腿長から(-クッション厚)する理由は
クッションの上に座ると
身体の位置が高くなりますね。
見かけ上、
座位下腿長は短くなります。
その分
フットサポートまでの長さも短くて済むので
クッション厚分はマイナスして考えます。
▼座位下腿長に(+靴底厚)する理由は
靴を履くと、見かけ上、
靴底厚分だけ座位下腿長は長くなります。
その分
フットサポートまでの長さが必要なので
靴底厚分はプラスして考えます。
(座位下腿長-クッション厚+靴底厚)で求めた値が、
最低限
フットサポートの可変幅内にあること。
これがユーザーに合う条件となります。
▼具体的な数字で計算し、確認してみましょう。
・座位下腿長→40cm
・クッション厚→(8cmあるが)→※3cm
※ここは座った時に実際に身体が高くなる分です。
3cm高くなったとします。
・靴底厚→1.5cm
これで算出すると
(座位下腿長-クッション厚+靴底厚)=
40-3+1.5=
38.5cm
38.5cmがこのユーザーにピッタリの
フットサポート位置になります。
この時
車いすのフットサポート可変幅が
38.5cmを含んでいればいいわけです。
例えば
可変幅が30cm~40cmならば
38.5cmにセッティング可能なので
この車いすは使えると判断できます。
もし、
可変幅が25cm~35cmだとしたら
38.5cmには調節できませんので
その車いすは適さないと判断できます。
▼フットサポート調節を重視するケース
高齢者介護において
フットサポートの調節を重視するのは
座った時
かかとが宙に浮くような車いすを選択する時です。
このようなケースでは
車いすの用途が
移動手段よりも
椅子代わりになることが多い。
この方にとってのフットサポートは
床と同じです。
最低でも
かかとがフットサポートに付く
この環境は整えるべきですね。
▼フットサポートの位置が変わってきた
フットサポートの位置は
大抵はキャスターより前方にあります。
前方に出ている理由は
キャスターとの干渉を避けるため
キャスターが回転しても
ぶつからないようにするためです。
これは仕方がないと思われていましたが
最近変わってきました。
フットサポートがキャスターより後方にある
車いすが登場しています。
これにはメリットがいくつかあります。
▼転倒リスクの低減
車いすの支持基底面内に
フットサポートを収めたことで
(キャスターと駆動輪が作る四角形の中に
フットサポートが入ったことで)
フットサポートに足を乗せたまま
車いすから立ち上がろうとしても
前方に転倒する危険が少なくなりました。
そもそもフットサポートに足を乗せたまま
立ち上がってはいけないのですが
実際に起きているので
転倒リスクをが下げられるのは
有り難いことです。
▼座位姿勢崩れの低減
膝関節を90度にして座れるようになり
姿勢崩れの要因を一部排除できました。
▼小回りが利く
車いすの回転半径が小さくなったことで
小回りが利くようになっています。
日本家屋には嬉しい変更ですね。