自動排泄処理装置には課題以上のメリットあり【vol.110】
10月1日~3日に開催された
国際福祉機器展HCR2014レポートをお届けします。
前回に引き続き
「自動排泄処理装置」を取り上げます。
尿と便、両方とも処理できる機器の方です。
参考機器は以下のURLからご確認ください。
前回は、
自動排泄処理装置の課題として
次の点を挙げました。
・買わないでレンタルしたほうが良いと言われる。
・PSEマークの基準が統一されていない。
・価格も高く、まだまだ普及していない。
など。
今回はその他の課題です。
・ずっと着けっ放しにしないで
・体位変換がままならない
・電動ベッドの背上げは危険
・専用パッドの取付け・取外し方法
です。
と、その前にお断りしておきます。
この内容は決して自動排泄処理装置を
中傷するものではありません。
この機器の現状を知っていただく
情報共有の場にしたいと思って書いています。
どうか、ご理解ください。
では、参ります。
▼ずっと着けっ放しにしないで
「この自動排泄処理装置は、
昼も夜もずーっと着けっ放しにするよりも
夜間だけ装着してオムツ替えの介護負担軽減に
利用することをおススメします。」
あるメーカーの担当者さんは
このような話をされてました。
そして付け加えるように
「一日中装着してても大丈夫ですよ。」
とも言います。
そう言われると
着けっ放しで使っちゃうでしょうね^^
使う側は。
陰部に装着するカップには、
専用パッドを取り付けるようになっていて
このパッドの交換は一日一回が目安になっています。
オムツ替えは一日一回で済むし、
こんな楽なことはありませんよ。
パッドの付け方が悪いと
排泄物がパッドから漏れ出ることもありますから
その時はすぐに交換が必要になります。
そのようなことがなければ
一日一回のパッド交換で良いわけです。
いくら夜間の介護負担軽減の利用がおススメでも
使う側の心理はそこで歯止めが効かないでしょう。
結局、24時間装着になってしまいそうです。
で、そうなった時、問題かなと思うのは
カップを股間に装着した時の姿勢。
大きくは二つ、問題がありそうなんです。
一つは、体位変換がままならない。
もう一つは、電動ベッドの背上げが危険。
▼体位変換がままならない
会場で試してみたんです。
股間にカップを当ててパッドをして
電動ベッドに寝ました。
両脚を30度くらい開いた仰向けの姿勢になります。
脚は閉じられません。
閉じればカップが股の内側を強く圧迫して痛い。
この状態だと体位変換もままならなくなります。
ずーっと仰臥位のままになります。どうしても。
30度側臥位は難しい。
ポジショニングをちゃんとすれば
30度側臥位もとれると思います。
ただ、身体を傾けると
パッドから排泄物が漏れ出る可能性が高くなる。
シーツや着衣がそれで汚れたら
介護の負担は減らないですよね。
夜間だけの、例えば時間にして8時間を
仰臥位のまま、両脚を大の字に開いたままの
格好で寝ていられるか。
それは辛いかな…、と思う。
それを24時間も続いたらと思うと…。
▼電動ベッドの背上げは危険
股間挟むカップの形状は、
お尻の下が扇形で、ここにお尻が乗る格好になります。
私はお尻が当たってるな~
という感じはそんなにしませんでした。
お尻に肉座布団があるからだと思います^^
仙骨が突出している方だと
床ずれ、大丈夫かな?心配。
カップの素材を柔らかくしたり
メーカーさんも工夫を凝らしています。
カップの形状や素材についてはまだまだ
発展途上と言ったところでしょうか。
問題は、カップを股間に装着したまま
電動ベッドを背上げした時です。
経管栄養のためとか、
背上げする必要のある方は危険です。
私が試した感覚で言うと
背上げ20度あたりから
カップが食い込んで股間を圧迫してきます。
お尻の裏側も当たる感じがします。
背上げ角度30度になると
ずっとこのままは辛いな~と感じます。
じゃ、背上げのまま使用するのは無理かと言うと
そうでもなくて
両膝をくの時に曲げると
この圧迫を解放することができます。
両脚を開いて、両膝をくの時に曲げる。
この姿勢を安定して「作れて」「保持できれば」、つまり
ポジショニングさえしっかりできれば
背上げの状態でも使えそうです。
だとしても、
背上げの角度は30度が限界かな、と思います。
背上げをしたまま自動排泄処理装置を使う場合は
お世話をする人に
ポジショニングのスキルが要求されます。
在宅介護で大丈夫でしょうか。
買わずに借りたほうが無難ですよ。
レンタルなら何かあったらサポートできますから
メーカーさんがこのように言うのは、
このあたりが理由なんでしょうね。
▼専用パッドの取付け・取外し方法
カップは、専用パッドを取り付けてから
股間に当て使用します。
このパッドの取付けと取外しに課題があります。
今のところ、二つのタイプがあります。
1)カップにパッドをテープで張り付けるタイプ
2)カップにパッドを専用器具で挟み込むタイプ
前者1)は、排泄物漏れの心配は少ないが
パッドの取外しが面倒で剥がしにくい。
後者2)は、パッドの取付け取り外しは簡単だが
排泄物が隙間から漏れ出る可能性が高い。
現在の流れとしては
2)の方法を改善していく方向で進んでいるようです。
▼最後に、課題は多いがメリットも多い
ここまで色々と問題だらけで
未成熟な機器だと言いましたが
それ以上のメリットがあるのも事実です。
おしっこや便を感知するとすぐに作動し
排泄物を素早く吸引してくれます。
臭いが部屋中に充満することは避けられます。
臭いがしない。
こんな良いことはないですよね。
吸引が済むと、続いて
陰部に温水シャワーを掛けて洗浄してくれます。
その後は微温風を当てて乾燥までしてくれる。
皮膚が清潔に保たれ衛生的ですよね。
便まみれ、おしっこまみれでいなくて済むんです。
気持ちいいはずですよね。
寝たきりのご本人のメリットを整理すると
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・陰部の不快感から解放され
・オムツを変えてもらうことへの遠慮もなく
・自身の床ずれ発生リスクも下がります。
介助者のメリットは
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・夜間ぐっすり休むことが出来る。
・臭いに悩まされなくて済む。
こんなに良い面があるんですよね。
色んな課題を差し引いても
利用しないのはもったいないと思いませんか?
私は思います。
購入に際しては助成制度もありますので
購入をご検討の方、病院・施設の方は
お住まいの市町村役場・福祉課へご確認下さい。
以上、
自動排泄処理装置はこれでおしまいです。
次回もHCR2014レポートは続きます。