うつ伏せ寝(腹臥位)のメリット・デメリット【vol.028】

腹臥位療法と言うのがあります。
うつ伏せ寝で身体に良い効果を得ようとする療法です。

でも、あまり知られていません。なぜか…。

今回のテーマは、腹臥位療法について、です。
うつ伏せ寝のメリット・デメリットをまとめてみました。

はじめに、腹臥位療法の歴史を簡単にご紹介します。

1987年、高齢者が抱える膝・股関節の拘縮の改善を目的に考案。

その後、1995年から3年間、
厚生省長寿科学総合研究事業の一環として臨床研究が実施され、
エビデンス(=科学的な根拠・証拠)を得て発表された立派な療法なんです。

とても身体に良いことが証明されているのに広まっていないのは
デメリットに理由があります。

●うつ伏せ寝のデメリット
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窒息死の危険がある。
これが一番の理由でしょう。

今まで仰向けで寝ていた人が、急にうつ伏せで寝ると、
それまで飲み込んでいた鼻水、唾液、痰が排出されます。

その量が多ければ、気管が塞がって窒息することがあります。

こうしたリスクがあるので、療法導入当初は目を離さず
注意深く観察しなければなりません。

ところが、介護施設も病院も、
一人の人に付きっきりでいられるほど余裕はありません。

だから、うつ伏せ寝には出来ないし、しない訳です。

また、1歳以下の乳幼児が突然亡くなる、乳児突然死症候群の原因の一つに
うつぶせ寝が挙がっていることもイメージを悪くしている理由かも知れません。

ちなみに、乳児突然死症候群の要因は、
・うつ伏せ寝である
・非母乳である
・両親が喫煙している
・大人の沿い寝で布団に顔がうずくまり窒息する
などと言われています。

医師によると、大人と乳幼児の呼吸のメカニズムは違い、
うつ伏せ寝が大人の死亡原因にはならないのだそうです。

では次に、身体に与える効果・メリットをまとめます。

●うつ伏せ寝のメリット
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メリットには次のような点があります。

・関節拘縮、円背が改善される
・嚥下障害が改善する
・慢性誤嚥性気管支肺炎が予防できる、改善できる
・尾骨部や仙骨部の床ずれが予防できる、改善できる
・認知障害が改善できる
・排尿と排便障害が改善できる
・イビキ、無呼吸が予防できる、改善できる
・血行を改善して脳梗塞が予防できる
・咳を鎮め痰を出しやすくする

腹臥位療法には、特に決まったお作法があるわけではありません。
決して無理をしないことが重要です。

ポイントは、
・首や肩を伸ばしてリラックスする
・クッションを上手に使って楽な姿勢をとる
・とっかかりは15分程度の短時間から始める
・2時間を限度とする
・痛みが出ないようにする
です。

無理は、脱臼骨折、窒息、身体の前面の床ずれ、
関節痛や腰痛を引き起こします。

実際にうつ伏せ寝をしてみると、呼吸が少し苦しくなります。
これは胸郭が圧迫されて広がりが抑えられるためです。

しかし、自然に腹式呼吸(横隔膜を上下させる呼吸)に切り変わります。
呼吸としては、むしろ腹式呼吸の方が好ましい状態です。

腹式呼吸は一回当たりの換気量が多くなるので
血中のガス交換が増え、血液の流れが良くなります。

また、うつ伏せ寝に慣れていない人もいるでしょう。
単なるうつ伏せ寝の習慣がなかっただけですので
慣れるまでは無理をしないで、半うつ伏せから始めて下さい。

使用する電動ベッドは、3モーターベッド、
背上げ機能・膝上げ機能・床面高さ調節機能が独立して動かせるタイプを
使用して下さい。

円背の改善では、クッションだけでなくベッドの機能も利用します。
180度回転して寝て、膝上げ部にお腹、背上げ部に膝を沿わせます。

さて、

腹臥位療法は、適切なポジショニングが生み出す効果である、
と言えるでしょう。

身体に無理な負荷を掛けているわけでなく、安楽さ第一、
重力を利用して時間を掛けて変化を促している点は
まさにポジショニングの極意そのものです。

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