曲げても生理的な快適さを損なわない背もたれ【vol.130】

今回のテーマは「背もたれ」です。

座位は背もたれで決まる。

それくらい大事な要素ですよ。

くつろいで座る椅子の背もたれには

どんなことが求められるのでしょうか。

そのあたりをまとめました。

▼くつろいで座るとは

休息しながらも活動できる状態です。

リクライニング車いすに座って

水平面と140度くらいの角度まで

背もたれを倒してもらってください。

寝るにはいい状態ですよね(笑)

思いっきりリラックスできますが

TVを観たり、本を読んだり

軽い飲食ができませんよね。

顔が斜め上の天井を観てますので

首を40度くらい屈曲して起こさないと

顔が正面を向きませんね。

これでは、

TVを観たり、本を読んだり

飲食など出来ようはずがありません。

くつろいで座るとは、

休息しながらも活動できる状態です。

TVを観たり、本を読んだり

軽い飲食が出来る状態です。

▼実は、背もたれを140度倒しても顔が正面を向く方法があります

背もたれを途中で二ヶ所曲げれば可能です。

リクライニングの回転軸とは別に二ヶ所

背もたれに曲る箇所を設けるのです。

背もたれの途中を二ヶ所曲げると

角度の異なる3つの背もたれができますね。

例えば、水平面に対して

一番下は140度倒した背もたれ

真ん中は140度から10度起こして130度の背もたれ

一番上は130度から30度起こして100度の背もたれ

にしたらどうでしょう。

頭部は100度の背もたれになるので

背もたれに寄りかかっても正面を向きますね。

首を屈曲する必要は全くありません。

このように

リラックスした背もたれを作るには

・背もたれを3つに分けると良い。

・3つの背もたれにそれぞれ違った角度を持たせると良い。

ことが分かります。

▼どうして二ヶ所なんでしょう

一カ所ではダメなのでしょうか。

その答えは、曲げる位置と

生み出せる角度に関係があります。

背もたれを曲げるとはイコール

脊柱を曲げることです。

背もたれのどこを曲げたら座り心地に影響しないか

その答えを求めて調査した論文があります。

その論文によると

第2~3胸椎部分と、第11~12胸椎部分

ここの二カ所は、ある角度までなら

曲げても生理的な快適さを損なわない

と報告しています。

それぞれの曲げの許容角度も求められています。

第2~3胸椎部分は、最大35度まで

第11~12胸椎部分は、最大12度まで

としています。

これを鑑みると

背もたれを曲げる箇所が一カ所では

不十分なことが分かります。

例えば、第2~3胸椎部分だけだと

先の例で行くと頭部を正面向けるには

40度曲げないといけなくなります。

ここの生理的な快適さを損なわない角度は

最大35度でしたから

40度も曲げたら不快になります。

曲げる箇所を二カ所にする意味が分かりますね。

▼背もたれに曲がる箇所を二ヶ所設けることで生まれる3つの背もたれは

1)首から上の頭部を支える背もたれ

2)胸郭を支える背もたれ

3)骨盤~体幹に掛けて支える背もたれ

です。

この3つの背もたれの角度を

冒頭で例えたような角度に調節すれば

その人に適したリクライニングが可能です。

リラックスして

TVを観たり、本を読んだり

軽い飲食が出来るようになります。

この発想を介護ベッド上の

ポジショニングに応用するのもありですよ^^

▼引用した論文はこちらです

『人間工学的手法による木製椅子の快適性評価と機能設計に関する研究(第17報)休息用いすにおける上体の支持方法の検討』

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