シーティング「股関節屈筋群と臀筋群」【vol.167】
シーティング第一章「人の身体のこと」
第13回目です。
脊柱と骨盤に関わる6つの筋肉群は、
次のような「3つの対」として捉えましょう。
1)背筋群と腹筋群
2)臀筋群と股関節屈筋群
3)ハムストリングと膝関節伸筋群
これらの筋肉群が「ここ」と「ここ」の骨をつないでいるから
脊柱が伸展する。あるいは、屈曲する。
骨盤が前傾する。あるいは、後傾する。
力学的構造の理解を深めましょう。
今回取り上げる筋肉群は、
「臀筋群」と「股関節屈筋群」です。
2つの筋肉群は、
体幹と下肢をつないでいます。
先ずは「臀筋群」からいきます。
▼臀筋群の働きは
股関節を伸ばすこと(股関節の伸展)。
それから、
股関節を外に開いたり(股関節の外転)
することです。
▼車いすの足漕ぎでずっこけ座りになる理由
座位姿勢のままで
臀筋群を収縮させる動きをすると
股関節が伸展し
股が開くようになります。
下肢は座面で動きが制限されるので
股関節は、
骨盤を後傾させて伸展させようとします。
骨盤後傾は、脊柱屈曲の反応を伴いますので
ずっこけ座りの姿勢を引き起こします。
ですので
余計に骨盤が前方に滑り出しやすくなり
ずっこけ座りが助長されていきます。
じゃ、
臀筋群を収縮させる動きって
どんな時?
それは
車いすの足漕ぎ動作が典型例です。
床を蹴り込む時に
臀筋群を思いっきり収縮させています。
車いすを足漕ぎする方に
ずっこけ座りが多いのはこのためです。
このようにならないためには
骨盤後傾をさせないことが重要です。
▼足漕ぎで骨盤後傾をさせない方法
それには、
骨盤を後傾させようとする力に負けない
骨盤を前傾させる力を作ることです。
上半身を思いっきり前傾させ
骨盤を引っ張って立てる力を作ること。
足漕ぎの時は
上半身を前傾させなさいと言われるのは
この力を作って骨盤後傾を防ぐためです。
おまけに
上半身を前傾させることで
体重を足に乗っけやすくなり
漕ぎだす力も大きくなる効果があります。
▼臀筋群の代表、大臀筋・中殿筋・小殿筋
臀筋群としては
大臀筋・中殿筋・小殿筋を挙げておきます。
大臀筋の奥に中殿筋があり
中殿筋の奥に小殿筋があります。
大臀筋は、
仙骨の仙腸関節付近と大腿骨をつないでいます。
股関節の伸展させる働きがあります。
プリンとしたお尻の肉は大臀筋です。
中殿筋と小殿筋は
骨盤の腸骨と大腿骨大転子間をつないでいます。
股関節を外に開く(股関節の外転)働きがあります。
詳細はこちらのイラストで確認してください。
続いて「股関節屈筋群」です。
▼股関節屈筋群の働きは
股関節の屈曲です。
ここでは代表的な筋肉として4つ挙げておきます。
・大腰筋(だいようきん)
・腸骨筋(ちょうこつきん)
・縫工筋(ほうこうきん)
・大腿直筋(だいたいちょっきん)
大腰筋と腸骨筋を合わせて
腸腰筋(ちょうようきん)と呼ぶこともあります。
縫工筋と大腿直筋は
膝関節を伸展させる働きも担っています。
◎大腰筋は
腰椎と大腿骨間をつないでいます。
ちなみに
100m走世界記録保持者
ウサイン・ボルト選手の大腰筋は
大根の太さ程に発達しているそうですよ。
素早い脚の振りは大腰筋のおかげなんですね。
◎腸骨筋は
骨盤の腸骨と大腿骨間をつないでいます。
この筋肉も太ももを上げる筋肉です。
◎縫工筋は
骨盤の上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)と
下腿をつなぐ長い筋です。
大腿骨をクロスするようにつながっています。
間に股関節と膝関節の二つの関節を挟むことから
二関節筋(にかんせつきん)と呼ばれています。
◎大腿直筋は
骨盤の上前腸骨棘の下と膝蓋骨(しつがいこつ)をつないでいます。
膝蓋骨は膝のお皿ですね。
大腰筋は腰椎を引っ張ることで
腰椎前湾による脊柱伸展と
骨盤前傾を促します。
腸骨筋と縫工筋と大腿直筋は
骨盤の腸骨上部を引っ張って
骨盤前傾と脊柱伸展に大きく貢献する筋肉です。
▼股関節の屈筋は骨盤前傾の力を生む
太ももを上げようとすると
つまり、股関節を曲げようとすると
骨盤を前傾させようとする力を伴います。
先の車いすの足漕ぎの例で言うと
脚を振り出す時に太ももを上げますので
骨盤前傾の力が強くなります。
そのまま上体を前傾させれば
骨盤前傾を保ちつつ漕ぎ足に上手く体重が乗せられ
漕ぐ力を発揮させやすくなりますね。
▼大腰筋・腸骨筋・縫工筋・大腿直筋は
こちらのイラストでご確認ください。
以上、ここまでです。
次回は、
「ハムストリング」と「膝関節伸筋群」です。