シーティング「上肢が座位姿勢に及ぼす影響」【vol.173】

シーティングの3要素

第一章「人の身体のこと」第19回目です。
今回は

「上肢が座位姿勢に及ぼす影響」

について取り上げます。
上肢の動きが

あるいは状態が

座位姿勢にどう影響するか

考えてみます。

▼上肢の重量を〇〇に移す
日常生活の中で座位姿勢の時

上肢はどこにありますか?
上肢はどんな状態ですか。
たいていは何かの上に乗っているはずです。

 

肘掛けの上

机やテーブルの上

太ももの上

クッションの上
どれかの上に乗ってると思います。
ぶらーんと垂れていることは先ずないでしょう。

 

どうして無意識のうちに

何かの上に乗せているのでしょう。
それは

座った時にバックやリックを椅子に置くように

重たい荷物を身体から外して

身体の負担を軽くしようとしているから。
身体の負担とは

姿勢を維持するために働いている筋肉

体幹固定筋の負担です。
上肢も肩にぶら下がる荷物みたいなものです。
体幹固定筋が疲労しないように

上肢を何かの上に乗せて置くと楽になります。

 

上肢を何かに乗せる行為、これを

「重量を移す」と言います。
上肢の重量を

肘掛け、机、テーブル、クッションに乗っけて

肩に掛かる負担軽減をしているんですね。

 

二つの上肢の重さは

全体重の13%に相当します。

体重60Kgの人なら7.8Kg(=60×0.13)です。
およそ8キロの荷物を

肩にぶら下げているわけですから

けっこうなお荷物ですよ(笑)
この荷物が肩にぶら下がっている限り

体幹固定筋はリラックスできません。

 

なぜって
体幹固定筋を緩めようものなら

簡単に猫背になってしまうからです。

 

好ましい座位姿勢を維持しようとするなら

上肢の重量を何かに移すことが重要です。

▼肩甲骨の動きと脊柱伸展反応を妨げない
他にも

上肢の動きによって

脊柱伸展の反応を起こすことができます。
例えば、
・肘を伸ばして万歳する

・肘を伸ばして左右に思いっきり広げる

・肘を曲げて腕を後方に引く
などの動きです。
あくびをする時

伸びをする時

深呼吸をする時

この動作をしますよね。

 

これらの動作を意識的にさせるのが

レクレーションの目的の一つです。

 

ポイントとなるのは
・上腕が後方に引けること。

・肩甲骨の動きを妨げないこと

・脊柱伸展反応を妨げないこと

 

上腕が後方に引けなければ

思いっきり左右に広げることも

後方に引くこともできません。
同じように

肩甲骨が動いてくれないと

万歳や腕を広げることも後方に引くこともできません。
脊柱伸展反応が起きても

それを抑えてしまうようでは

脊柱伸展は出来ません。

 

座位において

最も注意すべき箇所は

椅子や車いすの「背もたれ」にあります。
特に
・背もたれの幅が広すぎる

・背もたれが高すぎる
背もたれの幅が広すぎると

万歳や腕を後方に引く行為を妨げます。
背もたれが高すぎると

脊柱伸展の妨げになります。

 

上肢の重量を何かに移すことと

背もたれが上肢の動きを抑制しないこと

脊柱伸展を妨げないこと
これらの環境が整えば

好ましい座位姿勢の維持は可能になってきます。

 

以上、ここまでです。
第一章は今回が最後です。
次回から第二章

「人と車いすの寸法関係」

に入ります。

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