床ずれに円座クッションがダメな理由【vol.020】
天動説から地動説へ定説が変わったような
スケールの大きい話でないにしても
科学の進歩により常識は日々塗り替えられています。
そんな事例は、介護の中にもあって、
円座クッション神話の崩壊、もその一つです。
今の常識は、円座を床ずれ箇所に使用してはいけない。
です。
かつて、
床ずれ個所の除圧に円座が向いていると使用されました。
その後、床ずれの原因や発生の仕組み、治癒の段階が解明されるにつれ
今では、円座は床ずれを悪化させるので使用すべきではない、と
正反対になっています。
いつ変わったかわかりませんが、
私が床ずれの勉強を始めた2005年に読んだ専門書では
既に円座の使用を禁じていました。
しかし、現実はそうでもなく
2007年、私が講師となって始めた床ずれ予防セミナーでは
介護職の中にも、円座禁止を知らなかった方がいましたし、
同時期、看護師さんに勧められて、入院中のご家族の床ずれ治療用に
円座クッションを買い求めに来られた方がいました。
5年前でこの状況でしたので
今でも、ひょっとしたら知らない方は知らない、かも知れません。
そこで今回は、ただダメと言われても納得いかないと思うので
円座クッションがいけない理由、
円座クッションが床ずれを悪化させるのはナゼか、
まとめてみます。
はじめに、床ずれがどのようにして発生するか、
おさらいしておきましょう。
●床ずれはどのようにして発生するか
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床ずれ発生を時系列にみると、
1)同一箇所に圧迫する力が、長時間、継続してかかると
↓
2)血管が押しつぶされ、圧迫箇所の血の巡りが遮断され
↓
3)圧迫箇所周辺の細胞に酸素と栄養が運ばれなくなり
↓
4)細胞が死ぬ(=壊死する)
↓
5)死んだ細胞内で細菌が増殖して
↓
6)化膿する
と言う一連の流れになります。
患部の発赤が消えない状態は4)の段階です。
よって、床ずれと判断されるのは4)以上です。
37度代の微熱が続くような時は5)の段階と考えられます。
風邪を引いたわけでもないのに微熱が続くような時は
どこかに床ずれが出来ていないか、疑ってみるべきでしょう。
さて、
寝ている状態で身体に圧迫がかかりやすい所と言えば、
骨張っている所、筋肉がやせて骨が突出した所、です。
尾骨・仙骨・大転子・腸骨・かかとなどに
床ずれができやすいのはこのためです。
床ずれ発生の直接原因は、
圧迫する力が加わり続けていることなので、発想として
患部を浮かせば圧迫がなくなる⇒床ずれリスクが下がる
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と考えるのは正しいと言えます。
ところが、円座クッションには患部の浮かせ方に問題があります。
●円座は患部の突っ張りを増大させ、結果、患部を圧迫する
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円座クッションを使用する時は、
患部が尾骨・大転子・腸骨・かかとにあっても、同じように
患部が円座クッション中央の窪みにはまるように当てられます。
この状態で円座クッションに体重がかけられると
円の中の皮膚は、ちょうど太鼓の皮のように
パンパンに張られてしまいます。
ここに、患部の重みが乗っかると
皮膚は引きちぎられんとばかりに益々強く張られてしまいます。
円の中では筋肉などの内部組織も強い力で張られます。
加えて内部組織は、骨と皮膚の間に挟まれて強く押しつぶされます。
そして患部周辺の血管は閉塞され、血流が遮断されます。
これは床ずれが発生しやすい環境を作っているも同じです。
更には、
既に床ずれがあったり、皮膚が脆弱だったり、損傷していると
皮膚は簡単に破れてしまうので大変危険です。
これらのことが解明され、円座神話は崩壊。
患部に円座を使用してはいけない、が常識となっています。
今のところは(笑)。