ベッド背上げに向かないラテックスマットレス【vol.021】
ラテックス材を使用した床ずれ予防マットレスは
介護ベッドの使い方によっては、使用が好ましくない場合があります。
良くも悪くも、ラテックス材の特性に起因しています。
今回は、ラテックス材の特性をまとめ
使用が好ましくないケースを明らかにします。
●ラテックス材とは?
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ラテックス材とは、
天然ゴムの樹液を型に流し入れ、高温で蒸して発泡成形したもの。
蒸しパンみたいに気泡を多く含んで弾力に富んだ素材です。
用途はマットレスだけでなく、
車いす用のクッションの中材はもとより
一般用のクッション中材としても使用されています。
ラテックス材のメリットは
・沈み込みを押し返す高反発力があり寝返りし易い
・抗菌作用があり衛生的
・へたりにくく長寿命、など
デメリットは
・通気性に欠ける
・吸湿性がない
・洗濯できない、など
ラテックス材は一般のベッドマットレスに
クッション芯材として使用されています。
通気性に欠ける、吸湿性がない、寝具としてのデメリットは、
ラテックス材を通気性・吸湿性のある素材でくるんでカバーしています。
洗濯できなくても、もともとマットレスは洗濯しないし
抗菌性の強さがある分、問題にはなりません。
ドイツのベッドメーカー・センベラ社のベッドなどは
木製板ばね床板とラテックスマットレスを併用して
それはそれはソフトで極上の寝心地を提供しています。
大きな家具屋さんであれば展示されていると思いますので
見かけたら是非寝てみて下さい。おすすめです。
●ラテックスマットレスがお勧めできない時とは?
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ラテックスマットレスは平らな状態で使用するには
自信を持ってお勧めできるのですが、
電動介護ベッドを使用して、背上げ機能を多用する、となると話は別で
ラテックス材のマットレスは決してお勧めできません。
理由は、ラテックスマットレスに寝て
ベッドの背上げを体験するとすぐに分かります。
背上げをしていくと、臀部と上半身がマットレスに食い込んでいきます。
背上げに必ず見られる現象で、どんな素材のマットレスでも起こります。
普通は、臀部が上半身に押し出されて前に滑り出すのですが
ラテックスの弾力は臀部を沈ませてスッポリ抱え込んでしまいます。
臀部の位置が固定され、身体のずれる動きが封じ込められます。
本来、臀部がずれて移動することで
マットレスヘの身体の沈み込みが回避されていたのですが
それがなくなったことで背上げにより発生するずれの力は、
身体をマットレスの中に押し込む力となって働きます。
更に、ラテックス材のマットレスの場合、高反発の弾力により
身体を深く吸収しながら、食い込んだ身体を強く押し返します。
マットレスに寝ている人の感覚としては
臀部と背中がマットの中に食い込むように強く押さえつけらけ
皮膚が思いっきり引っ張られる感じがします。
その力は、ウレタン、ジェル、エアーなど、
他のどの素材を使用したマットレスよりも強く
健康な方でも息苦しくなります。
背上げ後に「背抜き・尻抜き・かかと抜き」をされずにいたら
最悪の場合、呼吸困難を引き起こす可能性があります。
床ずれがある方なら、逆に悪化させてしまうでしょうし
顎が突き出で頚椎の過伸展を引き起こすでしょう。
この状態が続けば拘縮を作るかも知れません。
介助者が気付かずにベッド上で飲食させようものなら
間違いなく飲み込めません。
飲んでも誤嚥を起こします。
背上げしたらすぐに
「背抜き・尻抜き・かかと抜き」をすれば良いではないか、
という問題ではありません。
背上げの最中は、短時間とは言え、
ベッドに寝ている方に強い苦痛を与えます。
背抜き介助は事後処理。
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ダメージを与えておいて、その後で楽にする
今の電動介護ベッド機構では解決できない問題を補う介助です。
他の素材のマットレスならダメージが少ないので
背抜き介助さえきちんとされていればそう問題とはならないでしょう。
ただ、ラテックス材マットレスだけは
見過ごせない強いダメージを与えますので
背上げをしてはいけないマットレスです。
当然、電動介護ベッドで背上げ機能を多用する方は
ラテックス材以外のマットレスを選定・使用した方が良い。
ラテックスマットレスは
平らな状態で使用するのに適したマットレスです。