駅のホームから消えたあの椅子【vol.121】

シーティングの観点で

身の回りにある「椅子」を

掘り下げて見てみようと思います。

今回はその第一回目、

駅のホームの椅子を取り上げます。

一人掛けの椅子が5人分つながった椅子が

駅のホームに設置されていますよね。

とても掛け心地が良い椅子です。

今から30年前と比べての話です。

▼今から30年前、

1985年頃の駅のホームには

ある形をした椅子が設置されていました。

どんな形だったかと言うと、

卵の殻をタテに割ったような形というか

チューリップの花びらのような形というか

スプーンのような形というか

ツルンとした丸みのある形をしていました。

樹脂製のね、

ブルーやイエロー、ホワイトなど

カラフルな色をしていました。

斬新なデザインでしたね。

何となく分かります?形?

40歳以上じゃないと分からないかな(笑)

当時は駅だけでなく公園やバス停など

至る所にありましたよね。

今は全く見かけなくなりました。

今でもたまーに家具屋さんを覗くと

この形の椅子を見かけることがありますよ。

この椅子の掛け心地が良くなくてね(笑)

「何でこんなに掛け心地の悪い椅子を

採用したんだろう…?」

と思ったものです。

シーティングのことなど何もわからない学生でしたが、

この椅子の掛け心地の悪さは

この形のせいだ、と感覚的に分かりました。

なので、

今ではすっかり見かけなくなったのも

納得がいきます。

あの椅子が消えた理由はズバリ!

掛け心地の悪さです。

だから切り替えのタイミングで

一斉に姿を消したのでしょう。

シーティングを学んで実践してきた今なら

あの椅子の「どこが掛け心地を悪くしていたのか」

良くわかります。

▼あの椅子のいけなかった所は2つあります。

一つは、

座面と背もたれを一体化した曲面と

そのデザインのせいで、

お尻の後ろが滑り台のようになったこと。

もう一つは、

骨盤後傾を招きやすかったことです。

▼一つ目、

お尻の後ろが滑り台のようになると

お尻を後ろに引くことが出来ません。

後ろに引いてもお尻が滑り、

前に押し出され元の位置に戻ります。

シーティングの知識があれば分かりますね。

お尻を後ろに動かせないことのデメリットが。

尻の後ろ側は空間、遊びが必要です。

あの椅子はこのルールに反し

お尻の後ろに遊びはなく、むしろ

後ろにずらせないよう抑制をしていた。

これはもう抑制に近い。

▼二つ目、

骨盤後傾を招きやすかった理由は

椅子の形、曲面が仙骨をサポートしていなかったこと。

曲面のためにお尻が後ろに引けませんでした。

しかも、

背もたれと仙骨の間には隙間が多くできて

寄りかかるとどうしても骨盤が後傾します。

なので脊柱伸展は難しくなり

自然と前かがみの猫背姿勢になる。

背筋を伸ばそうとするとしんどい。

掛け心地は眼中に無い

意匠重視の椅子だったんですね。

仕方もありませんね。

当時はシーティングのシの字も

知られてなかったのですから。

あれから40年(きみまろ風に)

いや30年(笑)

2,980円で買えるオフィスチェアにも

シーティングのノウハウは活かされています。

30年前のスチール製事務椅子から比べたら

価格も掛け心地もはるかに良くなってます。

有り難いことです^^

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