だからと言って背抜きしない理由にならない【vol.031】

私の好きなフレーズに、こんなのがあります。
「●●だからと言って、○○しない理由にならない。」

○○に「背抜き」を当ててみると、なかなかイイ感じです。
自画自賛（笑）

これまでも「背抜き」の重要性を訴えてきましたが
Ｍさんのメッセージを読んで、もっともっと、何度も何度も、
背抜きの重要性を発信しないといけないな、と強く思いました。

今回は、背抜き用グローブをご購入の
Ｍさんからお寄せいただいたメッセージをご紹介します。

そして、私からＭさん宛に打った返信メールで
私の思いをお伝えできれば、と思っています。

Ｍさんは背抜きグローブをご購入の前に、
当店に電話を下さいました。今年、３月の初めです。

介護施設でじょくそう対策を担当していること、
これから背抜きに本腰を入れ取り組もうとしていること、
背抜きの手順・方法・コツなどが良く解からないこと、など
正直にお話し下さいまして、

その場で、背抜き用グローブを２セットご注文されました。

お届けしてから１ヶ月が経った４月11日、
当店からお送りしたアンケートに応え、
施設の現況を封書で寄せてくださいました。

匿名なら公開ＯＫと、Ｍさんの了解をいただいております。
以下、原文そのままにご紹介しますね。

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<ここから>

働いている所は　寝たきりの方が50％越であり
背抜きが必要と思い購入しました。

しかし、約20名のスタッフの内
使用しているのは２～３名です。

理由としては、面倒くさい
手間がかかる、むれる、などです。

高齢者の方も、脳梗塞、認知症などの理由から
感想を言って下さる方もなく、定着していないため
残念に思っています。

「気持ちが良い」他に、

例えば背抜き前後の体圧の比較などの科学的根拠があれば
もっと利用者が増えるのではないかとも思います。

<ここまで>
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背抜きグローブを現場に導入してみたものの
スタッフのほとんどが使用していない現実。

背抜きをしても入居者さんの反応がなく、
何が良いのか分からない。

グローブを使うメリットが
「気持ちが良い」と言ってもらえるだけでは
スタッフにどうしても使用しなさいとは言えない。

何かしら床ずれ予防に効果ありの証拠があれば、
スタッフも納得して使用するのではないか…。

床ずれ対策担当であるＭさんの悩みが
ヒシヒシ伝わってきます。

私はすぐにＭさんへの返信メールを打ち始めました。
一部抜粋でご紹介します。

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<ここから>

面倒くさい、手間がかかる、むれる…、
科学的根拠があれば…、

Ｍさんの悩みが伝わって参ります。

確かに「背抜き」は手間がかかりますね。

背抜きをしたからと言って
すぐに床ずれ発生率が下がるようなことは起こりません。

なぜなら、背抜きは「事後処理」だから。

電動ベッドの背上げや背下げで
身体を引きずってダメージを与えた後で
残った突っ張りを取り除くのが、背抜きです。

身体の引きずりによる皮膚や内部組織へのダメージ、
これがある限り、床ずれ発生リスクは容易に下がりません。
また、ストレスの持続が発生原因になります。

背抜きは、ストレスを解放し、
突っ張り感の持続によって身体が受けるダメージを回避します。
この点は、床ずれ予防に大きく貢献します。

効果が見えないからと言って、
背抜きをやらない理由にはなりません。

言葉を発することがないから
効果がないとは言えません。

偉そうにすみません。

私はセミナーで必ず受講生に体験していただくことがあります。

電動ベッドの背上げ・背下げを体験し
自分の身体で感じてもらうこと、です。

電動ベッドではマットのどの位置に、何を目安に寝るべきか。
ハムストリングが短縮している人には、どんな配慮が必要か。
股関節可動域制限のある人には、どんな配慮が必要か。
背下げの時、一機に真っ平らまで戻してはいけないのは、なぜか。
どうして「背抜き・尻抜き・かかと抜き」をしないといけないか。

ほとんどの受講生が頭でなく心と身体で納得します。

この体験なしの人が介護の現場に立つことは
私から言ったら、決してあってはならないこと。

Ｍさん、

もし、職場のお仲間に、一人でもこの体験のない方がいたら
本当はもっといる可能性があります。

是非、全員で、改めて、体験の場を共有して下さい。
特に新人さんの入る、このタイミングがベストです。
ベテランさんの自尊心も守れます。

背抜きは絶対に必要な介助です。

グローブはダメでも、背抜きをあきらめないでください。
正しいことをあきらめないでください。

<ここまで>
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そして、いよいよメール送信しようとしたら
Ｍさんのアドレスがない…。あれっ？

Ｍさんは電話注文だったのでメールアドレスを
お訊きしてなかったのです^^
それでこのメールをＭさんに送ることは出来ませんでした（笑）

ので、要約して葉書で送りました。

背抜きは効果があるのですが、即効性はありません。
ジワジワ効いてくる漢方薬のような存在。

背抜きを続けることは、体質改善に似ています。
介護する側の、です。

他人の価値感を変えるのは容易なことではありません。

しかし、ある瞬間、その重要性に気付くことがあります。
だから、気付きの種は蒔き続けることですね。