原点は「背抜き・尻抜き・かかと抜き」【vol.052】
原点に戻って見ようと思います。
取り留めなくなるかもしれません。
どうぞお許しください。
●「背抜き・尻抜き・かかと抜き」を言い出したのは…、
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多分ですが、私が最初だと思います。
まだ在宅サービスで福祉用具レンタルに関わっていた
2007年5月24日、第一回目の床ずれ予防セミナーを開催します。
この時のテーマは
「床ずれを発生させているのは私たちかも知れない。」でした。
このタイトルが浮かんだのは
ある模型の実験をしたのがきっかけでした。
この頃の私は看護師さんを対象とした褥瘡セミナーに
もぐりこんで参加していました。
セミナーでの発見は、床ずれにはズレの力が影響していること。
圧迫だけでなく引きずるような力が床ずれを悪化させているということ。
で、ピンときたのが電動ベッドの背上げと背下げです。
これをすると必ず体のズレが起こります。
「これか、床ずれを発生させていたのは。
それで背抜きが大事なんだな。」
そして
介護の現場で背抜きを知らない人が多かったこと、
背抜きをしている人がいない現実を知ります。
「これじゃ、私たちが床ずれを作っているようなものだ…。」
●なんで体がずれるんだろう?
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初めは理由がわからなかった。
重力に従って滑り落ちるんですよ。
こんな解釈に理系の私は納得しませんでした。
なんか違う…。
そこで模型を作って実験します。
薄い発泡のボードをくりぬいて人型を作り
腰の所で曲がるようにピンでつなぎました。
マットレスも同じようにして作り
腰部で曲がるようにしました。
二つを重ねて背上げ・背下げをします。
すると体とマットレスにずれが起こるのです。
なんでだろう?なんでだろう?と
模型の動きをよーく見ていると
腰を曲げた時にお尻の長さが長くなっていることに気づきました。
正確に言えば、お尻のあたりで
背上げをすると背面長が伸びて
背下げをすると背面長が縮んでいることに気づきました。
マットレスはどうなんだ?
マットレスは体とは真逆の変化をしていました。
重なった二つの物体が曲げられることで
接触面の長さに変化が起きている。
一方は長くなり、一方は短くなる。
だから物体がズレる。
これが本当の原因だとわかりました。
●じゃ、ズレの方向、体が動いていく向きは、何で決まる?
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「たぶん摩擦だな。」
接触している箇所には摩擦があります。
摩擦の小さい方が動かされる、と仮説を立てました。
一つの実験をします。
ベッドに頭と足の向きを180度逆にして寝て
背上げと背下げをしました。
仮説が正しければ
背上げとともに動き出すのはかかとです。
実験開始。
案の定、背上げでかかとが動き出しました。
上半身は全く動きません。
今度は背下げです。
やはり最初にかかとが動き出します。
上半身は全く動きません。
これで摩擦の小さい方が動かされることが確認できました。
●この実験で一つの違和感が生まれます。
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「背抜きだけじゃ足りないよね。
一番ズレを感じるお尻の背抜きをしないと
それから、かかとだってこんなに引きずられてるし…。」
これが「背抜き・尻抜き・かかと抜き」の始まりです。
本当のところ、私が行った実験なんてどーでもいい。
ベッドで背上げや背下げをした後は、すぐに背抜きをする。
尻抜き、かかと抜きも忘れないでする。
これが徹底できればいい。
でも、なぜ体がずれるかの仕組みを知らないと
真の意味で、背抜きの重要さを理解できないでしょう。
また、事後処理である背抜きの、根本解決策も生まれない。
背抜きに限らず、仕事が作業にならないよう
もう一歩深く突っ込んで観る姿勢を失いたくないですね^^
あれから6年以上なりますが
私自身まだまだだと思います。
9月の19日に高齢者介護技術講座を三時間受け持ちます。
ここでも「背抜き・尻抜き・かかと抜き」を
受講者全員に体感してもらいます。
くどい!
聞き飽きた!
また背抜きの話かよ!
そう言われても
何度でも話して、体感してもらうつもりです。
ずっとね^^