下肢の外転・外旋予防ポジショニング方法【vol.146】
下肢の(正しくは股関節の)外転・外旋予防ポジショニング。
その具体的方法の説明です。
内転・内旋予防も一緒に考えていきます。
条件は、円背の方で、仰臥位です。
円背の方でなくても考え方は同じです。
円背の方の立位を見ると
股関節が外転して外旋している方ばかりでなく
股関節が内転して内旋している方もみられます。
このように円背の方の立位では
外転して外旋する反応や
内転して内旋する反応は
同時に起こっています。
なぜそうなるかは
身体のバランス原理からして当然なんですね。
詳細は、ここでは触れません。
立位の状態から仰臥位になっても
股関節の状態は同じです。
立位から臥位になり
体重を支える役目から解放された時に
股関節の状態を好ましい位置に戻す。
寝ている時間、どんな姿勢でいるかが
座位姿勢と立位姿勢に大きな影響を与えます。
骨盤がすこしでも良い状態に戻れば
立位姿勢と座位姿勢が良い状態に戻れます。
良い状態に戻ることは無理だとしても
悪化を遅らせることはできます。
このためにポジショニングを行います。
では、ポジショニングに入ります。
▼股関節を中間位に保つ
目指す下肢の状態は「股関節の中間位」です。
股関節が外転も内転もしていない状態
股関節が外旋も内旋もしていない状態、にします。
イラストにするとこんな感じです。
骨盤↓
▼▼▼▼▼▼▼▼▼
◎▼▼▼▼▼▼▼◎←股関節
│ ▼▼ ▼▼ │
| |
| │←大腿部
│ │
● ●←膝関節
│ │
| │
| |←下腿部
| │
─ ─←足
ただし、
股関節の屈曲だけはさせてください。
でないと
安楽なポジショニングにはなりません。
足はほぼ平行の状態です。
▼両下肢をクッションに乗せ、股関節を屈曲する
両下肢全体が乗る
サイズの大きいクッションを使います。
まず、クッションの上に両下肢を乗せます。
イラストにするとこんな感じ。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼
◎▼▼▼▼▼▼▼◎
┌─│─▼▼─▼▼─│─┐脚の付け根
| | | │
| | │ │
│ │ │ │←大きいクッション
| ● ● │
│ │ │ │
| | │ │
| | | │
└─|───────│─┘かかとの上まで
─ ─
脚の付け根からかかとの上までが
クッションに乗るようにします。
かかとはクッションに乗らないほうが
感触が良くなります。
膝関節は無理に伸ばさず
自然に曲がった状態のまま保持できるように
クッションの高さと形を整えます。
かかとは少し浮かせて下さい。
イラストにするとこんな感じ。
↓下腿部
足→│─────●←膝関節
\
\←大腿部
\
→骨盤▼───
─────────────────────
ここまでかかとを高くする必要はありません(笑)
テキストだけでイラストを描くと
こんな感じになるのでご勘弁ください。
▼下肢が外転して外旋している場合
骨盤↓
▼▼▼▼▼▼▼▼▼
◎▼▼▼▼▼▼▼◎←股関節
/ ▼▼ ▼▼ \
/ \←大腿部
/ \
● ●←膝関節
\ /
\ /←下腿部
\ /
/ \←足
↓ ↓ ↓ ↓
■▼▼▼▼▼▼▼▼▼■
■◎▼▼▼▼▼▼▼◎■
┌■│ ▼▼ ▼▼ │■←三角クッション挿入
|■| |■│
|■| │■│
│■│ │■│
| ● ● │
│ │ │ │
| | │ │
| | | │←大きいクッション
└─|───────│─┘
─ ─
クッションの両側から
三角クッションでくさびを差し込みます。
イラストでは分かりにくいですが
クッションの下に三角クッションを差し入れます。
下肢の外側を高くして内側へ戻る力を作ります。
これで中間位の状態を整えます。
ポイントは、
くさびは股関節を含む大腿部に差し入れます。
股関節も一緒にサポートしましょう。
大腿をまっすぐにすると下腿もまっすぐになります。
下腿へのくさび差し込みは必要ないでしょう。
足が平行になっていることが確認できればOKです。
■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■
OK状態 ダメな状態
▼下肢が内転して内旋している場合
骨盤↓
▼▼▼▼▼▼▼▼▼
◎▼▼▼▼▼▼▼◎←股関節
\ ▼▼ ▼▼ /
\ /←大腿部
\ /
● ●←膝関節
/ \
/ \←下腿部
/ \
\ /←足
↓ ↓ ↓ ↓
▼▼▼▼▼▼▼▼▼
◎▼▼▼▼▼▼▼◎
┌─│─▼▼─▼▼─│─┐
| | | │
| | / ̄\ │ │
│ │ / 山 \ │ │
| ● / ̄\ ● │
│ │ / 山 \ │ │
| | / ̄\ │ │
| | / 山 \ | │←大きいクッション
└─|───────│─┘
─ ─
クッションの中央部、下肢の間に山を設けます。
下肢の間を高くすることで
下肢が自然と外側へ戻り
中間位となる状態にします。
山を設ける位置は、
大腿部~膝関節~下腿部に渡って全体です。
クッションの中材を動かして山を形作るのが良いでしょう。
下肢の間にクッションを挟む方法はお勧めしません。
無理に下肢を開くことになるからで
かえって筋緊張を強めかねません。
足が平行になっていることが確認できればOKです。
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■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■
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OK状態 ダメな状態
ここまで説明した対処の仕方は
ある形のクッションを使うことで容易になります。
それがいかだのように
丸棒が4本つながったクッションです。(下の写真をご参照ください)
次回から側臥位に入ります。