90度側臥位は胎児ポーズで【vol.154】
胎児がお母さんのお腹の中にいる時の
あのポーズを思い浮かべてください。
90度側臥位のポジショニングは
胎児のポーズで整えます。
これには3つの理由があります。
1)支持基底面が広がり体位が安定する。
2)背筋群の筋緊張緩和になる。
3)骨盤捻じれが起きにくい。
一つずつ説明します。
▼支持基底面が広がり体位が安定する
胎児のポーズで90度側臥位になると
支持基底面が楕円形になります。
直立不動の90度側臥位だと
支持基底面は細い棒のようになります。
楕円形の支持基底面の方が安定性が高いのは
説明するまでもありませんね。
体位が安定すると
体位を維持するために働く筋肉が
少なくて済みます。
それだけ休める筋肉が多くなります。
リラックスできるようになります。
筋肉がリラックス出来ると
関節拘縮の心配も少なくなります。
▼背筋群の筋緊張緩和になる
仰臥位や30度側臥位ばかりだと
背中側の筋肉群の緊張がいっこうにほぐれません。
90度側臥位をとると抗重力筋が変わるので
背中側の筋緊張を和らげることができます。
また、
胎児のポーズをとると背中側の筋肉は伸ばされます。
筋肉をストレッチしているのと同じです。
筋緊張が和らげば…?
そうです^^
拘縮の心配が少なくなります。
90度側臥位では下側になる肩に圧迫が増えます。
「肩抜き」介助が欠かせません。
「肩抜き」介助は
下側の肩を身体の前方に引き出すようにします。
これで90度傾けた時の皮膚のツッパリや
ズレの力が肩から抜けます。
肩の位置が前方に移動することで
肩に乗っかる重量が軽くなります。
肩抜き介助には肩甲骨を外側に開く効果もあります。
仰臥位では肩甲骨を内側に閉じるような筋緊張が生じます。
この筋緊張は、両肘を後ろに引いて
胸を張るような恰好を引き起こします。
肩抜き介助で肩を前方にもってくると
肩甲骨が外側に開きます。
この状態であれば
両肘を後ろに引いて
胸を張るような拘縮は引き起こしにくくなります。
▼骨盤捻じれが起きにくい
胎児のポーズの下肢は
両膝と両くるぶしの位置が揃っています。
90度側臥位では両下肢が同じ形で重なります。
この状態だと骨盤の捻じれが起きにくくなります。
骨盤の捻じれがないと
座位姿勢を取った時も
好ましい姿勢を整えやすくなります。
ただし、
この状態の下肢には問題もあります。
次の2点。
1)下肢同士が重なる箇所が圧迫され床ずれ発生が心配
2)上側下肢の股関節内転と骨盤傾斜が起きる
この2点の対応は
クッションを下肢の間に挟む、または
アイロン台を下肢の間に挟む、
の方法で回避できます。
クッションを挟むにしても
アイロン台を挟むにしても
要点は同じです。
▼下肢同士が重なる箇所が圧迫され床ずれ発生が心配
下肢同士が直接当たらないようにすればいいので
大腿と下腿の重量を
クッションまたはアイロン台に移します。
これにより下肢同士の重なる箇所の圧迫は
分散されます。
クッションを挟む方法では、
上側下肢の重量とクッションの重量が
下側下肢に乗っかります。
なので下側下肢の大転子やくるぶしの圧迫が増します。
床ずれの発生には注意が必要です。
アイロン台を挟む方法では
下側下肢に上側下肢の重量は乗りません。
また、下肢の間に空間・隙間が出来
通気性も良くなります。
なので、私としてはアイロン台をお勧めしています。
▼上側下肢の股関節内転と骨盤傾斜が起きる
股関節内転も骨盤傾斜も
上側下肢が
太もも→膝→すね→足に向かうに従って
高さが低くなるために起こります。
下肢の重みは股関節を通じて骨盤にぶら下がり
骨盤を斜めに傾けてしまいます。
もしこの状態で拘縮すると
座位姿勢では上体が傾いてしまいます。
このようにならないためにも
90度側臥位の姿勢では下肢を整え
骨盤を整える必要があります。
▼下肢を整え、骨盤を整えるポイントは
整え方のポイントは
上側になる下肢の、
股関節の高さと膝関節の高さと
足首の高さを同じ高さにすることです。
胎児のポーズを崩さずに、です。
これをクッションを挟むか
アイロン台を挟むかの方法でやります。
こうすれば股関節の内転は修正でき
股関節が中立位になります。
股関節が中立位だと
骨盤の傾斜がなくなります。
骨盤は垂直に脊柱を受けることができます。
この状態であれば
座位直後の上体の傾きは防げます。
▼上肢の整え方
基本的なことは下肢と同じです。
上側上肢は
肩関節とひじ関節と手首を
同じ高さになるように支えます。
クッションを使う方法と
アイロン台を使う方法とありますが
下肢の時と同じ問題点があるので
私としてはアイロン台をおすすめします。
以上です。
寝ている時の姿勢をほったらかしたまま
座位の時だけ姿勢を整えようとしてもどだい無理。
好ましい座位姿勢は
好ましい臥位姿勢があってこそです。
臥位のポジショニングが整えられるようになったら
次は座位姿勢のポジショニングに取り掛かりましょう。